2024年上期(1-6月)の株式相場は、極めて堅調な動きとなりました。日経平均株価は年1989年に記録した過去最高値を約34年ぶりに更新するなど、半年間で18.3%の上昇となりました。米国株式は、米S&P500指数で14.5%、米ナスダック総合指数は18.1%の上昇となっていますが、外国為替市場で大幅な円安外貨高が進んだので、国内投資家にとって極めて良好な投資環境となりました。こうした環境下で始まった新NISAの効果もあり、投資信託市場も歴史的な活況を呈しています。今回の連載では1-6月の投信市場の資金動向を確認するとともに、新NISAが始まった半年間で見られた変化についても見ていきたいと思います。
投信残高は過去最高の更新続く
個人投資家の動きを反映すると言われる上場投資信託(ETF)を除く公募株式投信の純資産残高は、6月末時点で132.0兆円に達しました。コロナ禍を経て、2021年に入ったあたりから投信残高の増加はつづいており、月次で見ても8カ月連続で過去最高を更新しています。また投資対象となる資産クラス別に見ると、外国株式型が69.4兆円で全体の53%と、ついに過半を超えるまで存在感を高めています。5年前の2019年6月末時点では外国株式型は18.0兆円で、全体の28%にとどまっていました。この5年間で、外国株式型の残高は50兆円を超える増加となっており、個人投資家が投資信託を活用する形で外国株式投資の残高を拡大させていったことがうかがえます。なお、この5年間で外国株式型の次に残高の増加額が大きかった分類はアロケーション型の7.5兆円増、次いで国内株式型の6.6兆円増となっています。債券相場が低調となる中で株式の値上がりを反映した部分も大きかったとは思いますが、2018年からスタートしたつみたてNISAにおいて、対象商品が一定の株式投資を行っているものに限定されたこともその一因となったと思われます。
資金流入額も歴史的水準に
続いて、過去5年間における資金フローも見ていきましょう。2024年上期の資金流入額は+8.4兆円と、半年間の資金流入額としては歴史的な水準となりました。投資信託協会のデータによれば、6カ月間での資金流入額としては2007年1-6月の資金流入額+8.6兆円が過去最大となっており、これに匹敵する高水準です。ちなみに、年次データでは2007年の+14.3兆円が過去最大で、当時は米サブプライムローン問題の表面化によって年後半の資金流入が減速したため、2024年下期の資金流入ペースが落ちなければ、これを塗り替えることも期待されます。
投資対象のタイプ別に見ると、2024年上期は外国株式型への資金流入が+6.8兆円と圧倒的な大きさで、次いで国内株式型が+8600億円程度となるなど、株式相場の好調を背景に引き続き株式型(外国株式型と国内株式型)に資金流入が集中していす。また、アロケーション型の+4600億円、外国債券型の+3000億円と続いています。個別ファンドで見ると、新NISA前後で売れ筋商品の顔ぶれが大きく変わっている訳ではありませんが、上位2ファンドの低コストのインデックスファンドへの資金流入額が+2.4兆円程度と圧倒的な大きさとなっています。3位と4位は新NISAの対象となっていない毎月決算型の外国株式ファンドですが、この2本は合計で+8300億円となっており、やはり新NISAによるインデックスファンドの人気の高まりが示されていると言えそうです。
パッシブファンドが資金流入をけん引
こうしたパッシブ運用を行うインデックスファンドは、つみたてNISAがスタートした2018年頃からその注目が高まってきましたが、実際の資金フローはどのようになっているのでしょうか。以下、投信評価を手掛けるモーニングスターのパッシブ運用に関するデータ項目を用いて見てみましょう。以下に示した通り、パッシブ運用となっているファンドの純設定額を集計すると、グラフの期間で一貫して資金流入になっていることが確認できます。パッシブ運用以外を「アクティブ」として集計すると、2022年まではアクティブ運用への資金流入額が、パッシブ運用を上回っています。しかし、2023年は上期・下期ともに拮抗しながらもパッシブ運用への資金流入額が若干上回り、新NISAがスタートした2024年上期にはパッシブ運用が+5.4兆円、アクティブ運用が+3.1兆円と大きくその差が開き、パッシブ運用が資金流入を大きくけん引した形となっています。2024年上期に歴史的な水準の資金流入額が見られた背景には、新NISAでつみたて投資枠(年120万円)が従来のつみたてNISAの投資枠(年40万円)の3倍になるなど、パッシブ運用を行う商品にとっての制度面の追い風も大きな要因になったと言えるでしょう。