finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

ビットコイン流出問題で待ったなしの「二大改革」 
暗号資産のETF化と分離課税化

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.06.11
会員限定
ビットコイン流出問題で待ったなしの「二大改革」 <br />暗号資産のETF化と分離課税化

リスク管理は盤石に見えたが…

中堅の暗号資産交換業者が、482億円相当のビットコインが同社ウォレットから不正に流出したと発表した。同社の顧客口座数は37万(2023年3月期)、過去3年間(2021年3月期~2023年3月期)の当期純損益は、+22億円、+10億円、▲15億円で推移しており、業容の割にケタ違いの流出額となっている。

金融庁は同社に対し、資金決済法に基づく報告徴求命令を出し、原因の究明と顧客の保護を求めた。同社は顧客の預かりビットコインについて、グループ会社支援のもと調達を行い、全額保証することを表明した。こうした迅速な対応もあり、今のところ、業界や顧客の間では大きな混乱や動揺は生じていないようだが、少なくとも暗号資産の投資家は、口座開設先がこうした巨額の損失に耐えうる社・グループなのか、今一度確認すべきものと思われる。

日本では、2014年に当時世界最大の規模を誇った交換業者から480億円相当の仮想通貨が不正流出したのを始めとして、2018年には大手交換業者から580億円相当が不正流出、その後2021年まで数十億円~100億円規模の不正流出が相次いだ。

こうした事案を踏まえ、法令改正による暗号資産の規制および業界団体による市場の健全化の取組みが順次行われてきた。例えば、暗号資産の流出リスクへの対応として、ネット環境から遮断されたコールドウォレット管理が原則義務化(2020年5月施行の資金決済法改正)され、今回の事案が発生した社においても顧客資産の95%以上をコールドウォレットにて保管・管理し、ネットに接続されたホットウォレットへの移動時には取締役を含む2名以上の承認を必要とする運営を行っていた。

さらに同社では、外部への暗号資産の出金に際しても、事前登録のウォレットのみに対して送金を可能とするほか、ウォレット登録や出金依頼に際しては2段階認証で顧客の意思確認を実施し、取引処理には複数人の関与を必須とするなど、相応のリスク管理体制を構築していたようだ。

それでも多額の不正流出が発生した。手続き通りの厳格な運営が行われていなかったのか、あるいは、内部に協力者がいたのか。今後の原因究明が待たれるところだ。個社の問題であればまだしも、仮に業界と当局が一緒になって長い年月をかけて構築してきた管理体制に脆弱性があり、そこを突かれたのであれば、業界全体で徹底して体制を見直す必要がある。信用回復にはそれなりの時間とコストがかかることになる。

こうした中、米国では今年の1月に米国証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物を裏付け資産とするETFの上場を承認して以降、iShares, Fidelity, Invesco など大手の資産運用会社が続々とETFを上場させており、マネーが大量に流入している。また、カナダやブラジル、オーストラリア、香港、タイなどでも暗号資産ETFの上場が承認されており、世界的な動きとなってきている。

「暗号資産ETF」のほうが投資家が安心しやすい

ETFの登場により、投資家は暗号資産交換所に口座を開かなくても間接的に暗号資産に投資しやすくなったほか、SECなど行政当局の監督下にある証券会社において預かり資産の分別管理が徹底されるなど、流動性や透明性、安全性が高まったため、これまで投資家保護に不安があるとして暗号資産の現物取引を控えてきた個人や機関投資家のマネーが流れてきており、価格も上昇傾向にある。

他方、我が国では投信法において暗号資産が投資信託の投資対象資産である特定資産に含まれておらず、金商業者等向け監督指針において非特定資産等に対する投資信託の組成及び販売が制限されているため、暗号資産を投資対象とする投資信託(ETFを含む)は存在していない。

一方、暗号資産交換業の自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の公表資料によると、国内の暗号資産口座数は4月末時点で1千万を超えたという。過去1年間で約300万口座増えた。また、月次の現物取引高は1兆6千億円強、証拠金取引高も1兆円強に達しており、足元で暗号資産取引の裾野はかなりの広がりを見せている。

このタイミングで不正流出が発生したことは、地道に利用者保護や市場の健全化に取り組んできた暗号資産交換業界にとって残念至極であろう。暗号資産の現物管理の難しさがあらためて浮き彫りになり、安全性の確保が最重要課題となった。やはり、我が国でも、より安全性の高い暗号資産ETFへの解禁に向けて、真正面から検討を進める時ではないかと思われる。

暗号資産ETFの安定化に欠かせない税制改正

なお、我が国の暗号資産交換業界としては、もし、国内で海外の暗号資産ETFの流通や暗号資産を原資産とした ETF の国内組成が認められ、これらの取引から生じた所得が分離課税の対象とされるのであれば、暗号資産の現物取引も総合課税の対象から分離課税の対象に変更すべきと主張している。彼らは、ETFと現物とで税の不均衡が生じれば、一般投資家がETFに流れるため、現物市場の流動性が枯渇し、国内暗号資産ETFの組成をも著しく困難にすること等を懸念している。

この点は、自民党デジタル社会推進本部のWEb3プロジェクトチームが2024年4月に公表した「web3ホワイトペーパー」でも言及されているところだ。筆者としても、国内の暗号資産業界の育成・発展、ひいては、国内投資家の投資機会の拡充のためには、単に海外業者組成の暗号資産ETFばかりが取引されることのないよう、各種手立てが必要ではないかと思う。

我が国では、暗号資産は「仮想通貨=資金の決済手段」という建付けから法整備が進んだ。確かに当初は決済手段として活用されたこともあったのだろうが、今や取引の大半はキャピタルゲインを追求する投資を目的としたものであり、多くの投資家は金融資産と見なしている。

また、近年、地政学リスクの高まりなどによりインフレが顕現化する中、インフレヘッジツールとして暗号資産をポートフォリオに組み入れる動きも出始めている。しかしながら、金融庁の関係者と意見交換すると、彼らは「価格変動率が高く、ハッキングによる不正流出リスクやマネロンリスクも懸念されるところ、暗号資産が『成長と分配の好循環の実現』に資する資産とはまだ言い切れない」とあくまでも慎重な見方を示している。

暗号資産を取り巻く世界的な潮流を考えれば、我が国においても暗号資産を金融資産と見なし、ETFの解禁や税制改正などの検討を進める時期に来ているように思う。そのためにも、今回の不正流出の原因究明を急ぎ、必要な対応が迅速に図られることを切に願っている。

リスク管理は盤石に見えたが…

中堅の暗号資産交換業者が、482億円相当のビットコインが同社ウォレットから不正に流出したと発表した。同社の顧客口座数は37万(2023年3月期)、過去3年間(2021年3月期~2023年3月期)の当期純損益は、+22億円、+10億円、▲15億円で推移しており、業容の割にケタ違いの流出額となっている。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #フィンテック・DX
  • #ETF
  • #会計・税制
前の記事
金商法・投信法改正で「RIA」解禁に道? 「投資顧問業型アドバイザー」の課題はミドル・バックとモニタリング
2024.05.14
次の記事
【文月つむぎ】金融庁新布陣スタート 知っておきたい井藤氏・屋敷氏・油布氏の横顔
2024.07.08

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 

2026.09.24

「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩

2026.09.10

株式市場の活況を次の改革へ―PTS・長時間取引・トークン化で日本株の競争力を高める

2026.09.03

販売現場の不祥事を誰が止めるのか――保険代理店・IFAの監督に必要な「多層管理」

2026.08.17

「口座を開く」から「資産形成が根づく」へ――日証協の調査が示す国民皆資産形成への次の一手

2026.08.10

個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―

2026.08.05

GPIFの国内投資を国富の拡大につなげるには――「金利のある世界」で問い直す年金運用

2026.07.22

「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

2026.07.10

速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台

2026.07.02

人生の出口にも、設計図を――終活を「思い」から「手続きの手がかり」へ

2026.06.22

おすすめの記事

ファンドアナリスト海老澤 界が2026年第1四半期を振り返る~投資信託の今と、これから

Finasee編集部

ファンドアナリスト篠田 尚子が2026年第1四半期を振り返る~投資信託の今と、これから

Finasee編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

トランプの米国に疲れた皆さん、欧州はいかが?日本で唯一の「英国株インデックスETF」が上場!

finasee Pro 編集部

【新NISA対象】ブラックロックから「iシェアーズ S&P500 トップ20 ETF」「iシェアーズ ゴールド ETF」が上場! 個人投資家にとっての魅力は…

Finasee編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
物色のテーマ、株価指標さえも時には変わる…ベテランファンドマネジャーが平成バブルで得た教訓
金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
「IFA管理のガイドライン策定を」――日証協が提言を受け新作業部会を設置
「攻め」と「守り」の均衡点はどこに?--2026事務年度金融行政方針のポイント解説
「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
金利上昇も「貯蓄から投資へ」の逆回転見られず、ラップ契約額は初の30兆円台に――資産運用業協会長の9月定例会見
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
SBI証券の売れ筋は国内株の沈下で「オルカン」「S&P500」が定番に、一方で非「マグ7」の「世界のベスト」がランクアップ
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
「攻め」と「守り」の均衡点はどこに?--2026事務年度金融行政方針のポイント解説
三菱UFJ銀行でバランス型の「ウェルス・インサイト」がトップ、毎月分配のアクティブファンドもランクアップ
三井住友銀行で「世界のベスト」が一番人気、「日経225」が落ちて「ダウ・ジョーンズ」や「MSCIコクサイ」がランクアップ
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化
日本版IFAに迫る自主規制の刃、そのとき求められる真の「独立」とは何か
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
金利上昇も「貯蓄から投資へ」の逆回転見られず、ラップ契約額は初の30兆円台に――資産運用業協会長の9月定例会見
「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
【金融風土記】「豊かさと分散」の経済圏――山形の金融動向とは
日本版IFAに迫る自主規制の刃、そのとき求められる真の「独立」とは何か
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
お客さまとその家族を深く知り、寄り添い続け、総資産の増加を目指すストックビジネスへ case of 横浜銀行
「真剣な姿勢できれいごとを貫く」時代を捉え、顧客に寄り添い、自ら変革し続ける case of 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
上位4ファンドの「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」「グロース・オポチュニティ」にそれぞれの事情=2026年8月純流入額トップ20
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【日本株アクティブファンド編】
「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら