finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】J-FLEC認定アドバイザーが1000人超に 親しみやすさと使い勝手の向上を急げ

文月つむぎ
文月つむぎ
2025.01.29
会員限定
【文月つむぎ】J-FLEC認定アドバイザーが1000人超に 親しみやすさと使い勝手の向上を急げ

日証協会長がNISA口座数の伸び悩みに言及

昨年12月20日に金融庁が公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、9月末時点のNISA口座数は2508万口座と6月末から3.4%(約83万口座)増えた。2024年の1~3月に186万口座増とロケットスタートした後、4~6月で102万口座増とペースダウン、7~9月で更に鈍化したのは8月に市場が一時的に急落したことが影響しているほか、NISA口座を持ちたいと考えていた層の開設割合が相応に高まってきたからではないかと見ている。

口座数を年代別にみると、40代が482万口座と最も多く、50代の481万口座と合わせて全体の4割を占めているが、伸び率では20代が最も高く(4.7%増、287万口座)、新NISAが資産形成層の投資意欲を高めていることが窺われる。

商品の買付額は1~9月で13.8兆円に達した。こちらも1~3月で6.2兆円、4~6月で4.0兆円、7~9月で3.6兆円と次第に減少している。内訳をみると、成長投資枠が各四半期で5.1兆円、2.8兆円、2.3兆円とペースダウンしているのに対し、つみたて投資枠は1.1兆円、1.2兆円、1.3兆円と右肩上がりで増えている。基本的に手元資金を運用する成長投資枠では、年初に枠一杯まで投資を行う投資家や市場動向を見ながら投資タイミングを計る投資家が多く、どうしても買付額の変動幅が大きくなる。一方、主に資産形成ツールとして利用されるつみたて投資枠では、投資家は定額をこつこつと積み立てており、市場動向を見ながら当初設定した積立方法を変更するケースはまれだ。昨年8月の相場急落時も、つみたて投資を取り止めた顧客は少なかったと聞く。よって、口座数増に比例して買付額も増えていくことになる。運用会社や販売会社は、つみたて投資を地道に行う顧客を増やしていくことが経営の安定化にも繋がることを改めて認識すべきであろう。

商品別に買付額を見ると、昨年9月末時点で、投資信託が約8.8兆円と全体の64%を占め、上場株式(約4.6兆円。全体の33%)を凌駕する。買付額(13.8兆円)を口座数(2508万口座)で割った1口座当たりの買付額は約55万円となっている。年齢別の1口座当たりの買付額は60代が約68万円と最も多く、50代(60.8万円)、70代(60.7万円)、40代(約58万円)と続く。また、成長投資枠とつみたて投資枠ごとの買付額が年齢別に公表されており、高年齢ほど成長投資枠の買付割合が高い状況にある(逆に見れば、つみたて投資枠の買付割合は低年齢ほど高い)。例えば、60代では成長投資枠の買付割合は83%となっているのだが、意外にも20代でも成長投資枠の買付割合が55%となっている。20代ではつみたて投資枠の利用が圧倒的に多いと思っていたのだが、若者層の中にも、既に運用資産用の資金をしっかりと蓄えている方々が少なからずいるということか。自分の過去を反省する今日この頃だ。なお、注意点として、各年代とも両方の枠を使っている投資家や成長投資枠で積立型の投資を行っている投資家がいることは申し添えておきたい。

当該調査結果を踏まえ、日証協の森田会長は今年1月15日の会見で「(2508万口座数は)成人の4人に1人と、なかなかの数。新規開設は直近やや伸び悩んで今は踊り場にあるが、まだ利用していない人に向け、金融経済教育の普及と合わせて取り組みたい」と述べている。確かに今後は、「投資は必要ない」あるいは「損が怖い」と思っている投資に無関心な層に対し、資産形成の必要性を感じ、行動してもらうことが必要だろう。

J-FLEC「認定アドバイザー検索」のプロフィール情報が物足りない

一方、対面の金融機関等からは、個社として取り組むには新規の顧客獲得コストが高くなってきており、併せて業界や政府という組織での取り組みを強化して欲しいとの声が聞こえてくる。そこで、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の出番となるのだが、先日、同機構は彼らが認定するアドバイザーが今年1月7日時点で1,144名になったと公表した。

都道府県別で見ると、高知(認定者なし)以外は少なくとも2名以上が認定されているが、関東ブロック(1都7県。529名)と近畿ブロック(2府4県。183名)で全体の62%を占めており、現時点では、全国に均等に分布している状況ではない。また、年代としては60代以上で559名と約半分を占めており、全体の9割が少なくともCFP、AFP、FP1~2級のいずれかの資格を保有している。出自については、J-FLECのホームページにある「認定アドバイザー検索」を使って、ざっと業務経験を調べてみたところ、銀行や証券会社などでリスク性金融商品販売に従事してきた現役引退組が多いようだ。

この「認定アドバイザー検索」では、氏名に加え、顔写真や基本情報(年代、保有資格、所属、住所、業務経験、ホームページなど)、相談内容(相談料の目安、相談対応時間、相談方法、相談対応エリア)、問い合わせ方法などを掲載するフォームとなっているのだが、中には、名前と年代だけしか掲載されていないアドバイザーも散見されており(特に地方の県にこうした事例が多い)、正直、このツールだけで各顧客のニーズに適した認定アドバイザーを探すのは難しく、今後、掲載情報の充実が求められるところだ。

なお、J-FLECでは、別途、学校や職場などに講師を派遣し、年間1万回、75万人を対象に金融経済教育を提供するという高い目標を掲げている。1月21日付の読売新聞の記事によると、昨年8月からの無料講師派遣の受付後、2か月間で600件以上の申し込みがあったとの事だが、年間1万件を達成するにはかなりペースを上げる必要がありそうだ。

J-FLECは昨年8月に本格稼働を始めたばかりであり、色々な課題があることは仕方のないことなのかもしれない。一方、投資無関心層の開拓に加え、既にNISA口座にて粛々と資産運用や資産形成を続け、相応の資産残高となってきた顧客に対しても、例えば、米国株式など特定分野への投資に偏り過ぎていないか、より分散の効いた安定的なポートフォリオへシフトすべきではないか等といったアドバイスを提供するタイミングに来ているように思う。J-FLECの活動強化とともに、個々の金融機関の販売員やIFAが、中立・公正なアドバイスを提供できる環境作りを政府・当局は更に進める必要があるように思う。

 

日証協会長がNISA口座数の伸び悩みに言及

昨年12月20日に金融庁が公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、9月末時点のNISA口座数は2508万口座と6月末から3.4%(約83万口座)増えた。2024年の1~3月に186万口座増とロケットスタートした後、4~6月で102万口座増とペースダウン、7~9月で更に鈍化したのは8月に市場が一時的に急落したことが影響しているほか、NISA口座を持ちたいと考えていた層の開設割合が相応に高まってきたからではないかと見ている。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #NISA
  • #金融リテラシー
前の記事
【文月つむぎ】「NISA限定の投資助言免許を」 金融庁アドバイス報告書に透ける思惑
2025.01.08
次の記事
【文月つむぎ】「老後2000万円問題」から6年、いまだに資産運用より節約術のほうがウケる世相を憂う
2025.02.10

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く

2025.11.07

【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉

2025.10.28

【文月つむぎ】統合・再編議論の先は? 金融庁WGが照らす地域金融機関の未来

2025.10.20

【文月つむぎ】発足はいつ?高市政権下での金融機関の役割

2025.10.10

【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ

2025.10.06

【文月つむぎ】iDeCoがんばれ、NISAに負けるな! 
現状打破へ「7つの提言」

2025.09.22

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

2025.09.12

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

2025.08.29

【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは

2025.08.05

【文月つむぎ】「衆参とも少数与党」で通る法案は? 野党の「金融所得課税」に自民の「NISA拡充」でバランス取りも

2025.07.24

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの

finasee Pro 編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
金融緩和、インフレ、インバウンドで日本の近代美術作品に熱視線?――アート市場の最新動向を銀座画廊界キーパーソンに聞いた
みずほ銀行の売れ筋は単位型ファンドの一巡で定番ファンドが復調、意外と高リスクのファンドが人気化
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
大和証券の売れ筋で光る“超新星”、「ピクテ・ゴールド」をパフォーマンスで上回る株式ファンドとは?
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
マン・グループの洞察シリーズ⑫
金に投資する意味とは何か
高水準の資金流入と株高で純資産残高が約8兆円の大幅増、流入4位に日本株バリュー。高パフォーマンスは「半導体」=25年10月投信概況
「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
いわき信組処分の余波……金融庁は刑事告訴を検討も、地域金融機関を救う「資本参加制度の延長論」に落とす影
マン・グループの洞察シリーズ⑫
金に投資する意味とは何か
石破カラー残る「地域金融力強化策」、高市政権はいかに脱色・染め直しをするか?
金融緩和、インフレ、インバウンドで日本の近代美術作品に熱視線?――アート市場の最新動向を銀座画廊界キーパーソンに聞いた
高水準の資金流入と株高で純資産残高が約8兆円の大幅増、流入4位に日本株バリュー。高パフォーマンスは「半導体」=25年10月投信概況
大和証券の売れ筋で光る“超新星”、「ピクテ・ゴールド」をパフォーマンスで上回る株式ファンドとは?
野村證券の売れ筋で「日経225」がトップ奪還、「ゴールド」を超えるパフォーマンスでランクインしたファンドは? 
みずほ銀行の売れ筋は単位型ファンドの一巡で定番ファンドが復調、意外と高リスクのファンドが人気化
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
片山さつき新大臣は「資産運用立国」基本線を継承へ!一方、岸田元首相が運用業界につきつけた「注文」とは…
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
【連載】こたえてください森脇さん
⑩役席者には収益目標、現場には残高目標。両方を達成するには?
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
【連載】こたえてください森脇さん
⑨顧客本位の実践より、自身の営業成績を優先している方が評価されていると感じる
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(3)アクティブファンドのモニタリング② α(アルファ)値とβ(ベータ)値
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら