finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑦1-3月の投信資金動向! 新NISAでの買付拡大と毎月決算型の現状

藤原 延介
藤原 延介
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティング部
2024.05.01
会員限定
【連載】藤原延介のアセマネインサイト<br />⑦1-3月の投信資金動向! 新NISAでの買付拡大と毎月決算型の現状

4月に入って好調だった株式相場がやや不安定な動きとなるなど、投資信託市場にとっても重要な局面となってきました。この連載「アセマネインサイト」では、引き続き投信市場の変化を見逃さないよう、その資金動向などを取り上げていきたいと考えています。

ちょうど新年度に入り、2023年度の投信関連データも揃ったところなので、年度の振り返りをしようとも思ったのですが、制度が拡充された新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まった2024年1-3月とそれ以前では、やはり資金トレンドが大きく異なっています。そこで、今回は四半期毎の資金動向を振り返りながら、新NISAスタートから3カ月のトレンド変化を見ていきたいと思います。

1.新NISAで急増した資金流入

個人投資家の動きを反映すると言われる上場投資信託(ETF)を除く公募株式投信の2024年1-3月期(Q1)の資金流入額は+4.0兆円と、2023年10-12月期(Q4)の+1.5兆円から大きく加速しました。この資金流入額を四半期ベースで振り返ってみると、2007年4-6月期(Q2)に記録した+4.2兆円以来およそ17年ぶりの高水準となっています。

ただし、2023年Q4は新NISAを控えた利益確定売りなどもあったため、それ以前とも比較する必要がありそうです。そこで、コロナショック後に資金流入が回復してきた2021年以降の3年間と比較すると、平均値でおよそ+2.1兆円となっており、新NISAスタートから最初の3カ月で資金流入額はほぼ倍増したということになります。NISAの投資枠に余裕がある1月に買付が多くなるという傾向を勘案すれば倍増は言い過ぎかもしれませんが、2023年までとは違った水準の資金流入が見られたと言えそうです。

また、投資対象となる資産クラス別に見ると、外国株式型への資金流入が+3.3兆円と圧倒的な大きさで、次いで国内株式型が+3900億円程度となるなど、株式相場好調を背景に引き続き株式型(外国株式型と国内株式型)に資金流入が集中していることがうかがえます。

個別ファンドで見ると、資金流入額上位4ファンドの顔ぶれは前四半期と変わらないなど、新NISA前後で売れ筋商品が大きく変わっている訳ではありませんが、上位2ファンドの低コストのインデックスファンドへの資金流入額が2.7倍程度に増加する一方で、3位と4位の新NISAの対象となっていない毎月決算型ファンドの資金流入額は合計で横ばいとなっています。そういった意味では、資金流入額の増えた部分の多くは、新NISAによる効果が出ていると考えられます。

 

2.新NISAの買付は3倍に?

1-3月期における新NISAのデータはまだ公開されておらず、執筆時点では2023年10-12月の速報値がリリースされたという段階です。全体のデータではありませんが、日本証券業協会が4月17日に公表した「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年3月末時点)」によれば、証券会社10社(大手5社・ネット5社)の1-3月期における成長投資枠とつみたて投資枠の買付額は4兆6822億円となっており、昨年1-3月の買付額(一般NISAとつみたてNISA)の2.9倍に達したということです。先に上位2ファンドの低コストのインデックスファンドへの資金流入額が2.7倍程度に増加したと指摘しましたが、その伸び率とも整合的と言えそうです。

ちなみに、以下のグラフでNISA(旧NISA)全体の買付額を見ると、2023年分は速報値ながら5.9兆円、ジュニアNISAを除くと5.4兆円となっています。新NISAの対象が18歳以上であることを踏まえて、一般NISAとつみたてNISAにおける商品別の買付額を見ると、投資信託(ETF除く)の比率は約6割(59.3%、2023年9月末)となっています。

かなり簡易な試算ではありますが、2023年のNISAにおける買付額5.4兆円のうち、約6割の3.2兆円程度が投資信託の買付だった計算となりますが、ETFを除く株式投信の2023年の設定額(買付額)は28.7兆円でしたので、NISA経由は全体の1割強でした。証券10社の調査ではありますが、2024年に入って新NISAでの買付額が3倍近くに拡大しているということは、新NISAでの投資信託の買付が年10兆円規模に膨らむ可能性があるということです。

 

3. 毎月決算型への資金流入

それでも、新NISA以外の買付の方が大きいということは留意しておく必要があります。4月11日付のブルームバーグに「新NISA対象外でも存在感、『毎月分配型』投信への資金流入が回復」という記事がありましたが、資金流入額ランキングで3位と4位に毎月決算型が入っているという事実は、新NISA以外の投資家ニーズを反映したものだと考えられます。

2023年の投信買付額は28.7兆円でしたが、2024年1-3月期の買付額は11.4兆円と前年同期の5.5兆円からすでに倍増しています。2024年の新NISAでの投信買付額が仮に10兆円程度になったとしても、投信買付額全体におけるその比率は2-3割程度にとどまると予想されます。

以下は、毎月決算型ファンドの残高と資金流出入を示したものですが、今年2月、3月と資金フローが改善していることがうかがえます。過去のNISA統計でも明らかなように、NISAにおける買付額が1-3月に大きくなりやすいという季節性を考えると、残る9カ月における毎月決算型へのニーズはさらに根強いものと感じられるかもしれません。また、4月以降の株式相場の下落を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まる可能性もあるため、新NISAの成長投資枠でもそれ以外でも外国債券型やアロケーション型に投資できる環境を整えておくことも大切です。

 

4月に入って好調だった株式相場がやや不安定な動きとなるなど、投資信託市場にとっても重要な局面となってきました。この連載「アセマネインサイト」では、引き続き投信市場の変化を見逃さないよう、その資金動向などを取り上げていきたいと考えています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #NISA
前の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑥新NISAの拡大とともに期待される確定拠出年金市場
2024.04.01
次の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑧
~米国投資信託最新事情
米国株式型資金流出が10年続く理由、米投信動向を解説
2024.06.03

この連載の記事一覧

藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉖
~米国投資信託最新事情
ミューチュアルファンド初の30兆ドル突破も、米国株ファンドから過去最大の資金流出

2025.12.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉕
NISA利用状況に変化あり⁉ 4-6月期のつみたて買付額が減少

2025.11.04

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉔
過去最大となった個人マネーで広がる物価高対策

2025.10.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉓
~米国投資信託最新事情
拡大続く米ETF市場、アクティブETFの本数はついにインデックスETF超え!

2025.09.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉒
外国株式ファンドの資金流入減速とトレンド変化の兆し

2025.08.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉑
パフォーマンス好調な欧州株ファンドに約11年ぶり高水準の資金流入

2025.07.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑳
~米国投資信託最新事情
2025年1〜3月の米投信動向と米投信業界のさらなる進化

2025.06.02

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド

2025.05.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑱日経平均下落で日本株ファンドに資金流入も、アクティブ型の人気に陰り

2025.04.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑰
~米国投資信託最新事情
2024年の米投信市場を振り返る 米ETFに1兆ドル超の資金流入、残高10兆ドル突破!

2025.03.03

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの

finasee Pro 編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

著者情報

藤原 延介
ふじわら のぶゆき
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティング部
2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社し、サステナブル投資や欧州規制動向など資産運用に関連する情報発信を担う。1998年三菱信託銀⾏⼊社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパン。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど約25年に渡りリサーチ、投資啓蒙に従事。慶応⼤学経済学部卒。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
企業型確定拠出年金の運用商品を見直し、継続投資教育を刷新したヤマト運輸が加入者の反響を得た手応えとは
野村證券の売れ筋トップ10入りした「野村日本バリュー厳選投資」は国内株ファンドを左右するバロメーター
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(4)バランスファンドのモニタリング① ベンチマークの課題とその解決法
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
富士通/富士通企業年金基金の企業型確定拠出年金の取り組み-加入者の関心を高めるセミナー、動画配信の工夫に迫る
【文月つむぎ】運用立国議連の新「緊急提言」を読み解く!NISA、税制の見直しで対応が求められる3つのポイント
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
J. フロント リテイリングに聞く企業型確定拠出年金制度運営の秘訣―継続投資教育の参加率が驚異の80%超えの理由とは?
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
企業型確定拠出年金の運用商品を見直し、継続投資教育を刷新したヤマト運輸が加入者の反響を得た手応えとは
富士通/富士通企業年金基金の企業型確定拠出年金の取り組み-加入者の関心を高めるセミナー、動画配信の工夫に迫る
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(4)バランスファンドのモニタリング① ベンチマークの課題とその解決法
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
SBI証券で再び米国大型テック株への関心高まる、新設「メガ10インデックス」もランクイン
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
いわき信組処分の余波……金融庁は刑事告訴を検討も、地域金融機関を救う「資本参加制度の延長論」に落とす影
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら