finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑥新NISAの拡大とともに期待される確定拠出年金市場

藤原 延介
藤原 延介
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティンググループ
2024.04.01
会員限定
【連載】藤原延介のアセマネインサイト<br />⑥新NISAの拡大とともに期待される確定拠出年金市場

新NISA(少額投資非課税制度)の買付額が好調なスタートを切るなど、資産運用への関心が強まる中で、同じく非課税の恩恵が受けられる確定拠出年金(DC)市場も制度拡充に向けた動きが出てきています。今年2月に米投資信託協会(ICI)のグローバル部門であるICI Globalが「日本の確定拠出年金制度と少額投資非課税制度の強化に向けた提言」というポリシーペーパー(政策研究報告)を公表しました。国内の投資信託市場の発展を考える上で、極めて貴重な提言であり、現時点におけるDC市場や新NISAの課題を網羅した内容でもあるので、今回の連載ではその中身の一部を見ていきたいと思います。

DC・NISA拡大への提言

このポリシーペーパーでは、資産運用業界を強化することを目的に、DC制度、NISA制度に関して主に6つの提言を行っています。

 

これらの提言のサマリーを見ると、5番目の提言「NISAの対象となる分散投資商品の範囲をさらに拡大する」のみがNISAに特化した項目となっています。これは、NISAの成長投資枠におけるデリバティブ規制が、政策意図に反して運用効率を高めるための利用も制限することになってしまっているのではないか、という懸念を表明したものです。一方で、提言①と②はDCプランへの拠出に関するもの、③と④はDCプランの投資商品に関するもので、DC制度の拡充や運用改善を訴求するものとなっています(⑥はDC・NISAも含めた投資教育全般のトピック)。NISAに関しては、投資枠の大幅拡大や制度の無期限化などを含めた今回の拡充によって、さらなる資産形成を推進するためにはDC制度の大幅な改革が必要であるという見方を反映したものと言えるでしょう。

DC市場の国際比較

これらの提言の中でも、最初に書かれているのが、DCプランにおける拠出限度額の引き上げです。日本における確定拠出年金の年間拠出額は、厚生年金や他の企業年金の有無などによって異なりますが、企業型で66万円、個人型(iDeCo)で81.6万円がその上限となっています。

第3回目の連載「NISA10年の振り返りと制度拡充への期待」で取り上げたように、新NISAにおいてつみたてNISAを引き継ぐ「つみたて投資枠」が年120万円、より幅広い投資信託や上場株式が購入可能な「成長投資枠」が年240万円と大幅に拡充され、さらに併用可能(最大年360万円)になったことを勘案すれば、DCの拠出限度額がやや物足りないと思えるかもしれません。以下の図表に示したように、今回のポリシーペーパーでは、主要国における企業型確定拠出年金との比較を用いて、日本の企業型DCの年間拠出額66万円の不十分さを指摘しています。

 



日本では確定拠出年金が2001年にスタートした際の企業型DCの年間拠出額は43.2万円でしたが、2004年に55.2万円、2010年に61.2万円、2014年に66.0万円と引き上げられてきました。一方で、英米など主要国は物価変動にも対応する形で年間拠出額が拡大し、昨今の円安効果もあり、その差は大きく拡大しています。日本では新NISAの投資枠が大幅に拡大したこともあり、この拠出額では老後の資産形成のコア部分として企業型DCはますます活用されにくくなるかもしれません。

成長加速が期待される日本のDC市場

それでも、日本の確定拠出年金制度がスタートしてから、DC市場は徐々に拡大してきています。以下、企業型DCの加入者数、資産額、年間の掛金額の推移を示したものですが、2022年度(2022年4月~2023年3月)の年間掛金額は1兆3453億円まで拡大し、年度末の加入者数は805万人、資産額は18.8兆円まで拡大してきました。ただし、加入者数の増加ピッチは緩やかになってきており、今後の市場拡大のためには、まずは拠出額(掛金額)の拡大、そして運用商品のリターン向上といった点が重要になってくると思われます。

 


一方で、iDeCoのこれまでの市場拡大には、少し違った特徴があります。以下に示したグラフのように、企業型DCと比較して加入者数の増加ピッチがここ数年で急加速しています。これは、2017年に施行された個人型DCの加入対象範囲の拡大がきっかけとなっており、足元でも資産運用ニーズの拡大などを背景にその成長加速のトレンドは続いています。

 


2022年度(2022年4月~2023年3月)の年間掛金額は4790億円、年度末の加入者数は290万人と、企業型と比較すると規模は小さいですが、提言の2番目にあるような「キャッチアップ拠出」等の措置によって、更なる拡大の余地があると思われます。また、2017年以降に急拡大したため、投資商品のラインナップもここ数年の激しい競争の上で提供されており、現金や元本確保型の比率も企業型DCと比較して低いという特徴があります。今回のポシリーペーパーでの提言はこうした現状の課題を反映したものであり、DC市場のさらなる成長加速につながる多くの提案が含まれていると思います。

新NISA(少額投資非課税制度)の買付額が好調なスタートを切るなど、資産運用への関心が強まる中で、同じく非課税の恩恵が受けられる確定拠出年金(DC)市場も制度拡充に向けた動きが出てきています。今年2月に米投資信託協会(ICI)のグローバル部門であるICI Globalが「日本の確定拠出年金制度と少額投資非課税制度の強化に向けた提言」というポリシーペーパー(政策研究報告)を公表しました。国内の投資信託市場の発展を考える上で、極めて貴重な提言であり、現時点におけるDC市場や新NISAの課題を網羅した内容でもあるので、今回の連載ではその中身の一部を見ていきたいと思います。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1
前の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑤外国株式型への資金集中とアセットアロケーションの重要性
2024.03.01
次の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑦1-3月の投信資金動向! 新NISAでの買付拡大と毎月決算型の現状
2024.05.01

この連載の記事一覧

藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉑
パフォーマンス好調な欧州株ファンドに約11年ぶり高水準の資金流入

2025.07.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑳
~米国投資信託最新事情
2025年1〜3月の米投信動向と米投信業界のさらなる進化

2025.06.02

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド

2025.05.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑱日経平均下落で日本株ファンドに資金流入も、アクティブ型の人気に陰り

2025.04.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑰
~米国投資信託最新事情
2024年の米投信市場を振り返る 米ETFに1兆ドル超の資金流入、残高10兆ドル突破!

2025.03.03

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑯外国株式ファンド中心に過去最高の資金流入を記録した2024年投信市場

2025.02.03

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑮不安定な相場で存在感高まるアセットアロケーション運用

2025.01.07

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑭
~米国投資信託最新事情
米ETFが10兆ドルに迫る!ミューチュアルファンドもETFも債券シフトの動き

2024.12.02

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑬投資戦略の多様化で4兆円に迫るインド株ファンド

2024.11.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑫過去最高となった家計金融資産で存在感高まる投資信託

2024.10.01

おすすめの記事

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉑
パフォーマンス好調な欧州株ファンドに約11年ぶり高水準の資金流入

藤原 延介

【プロが解説】「服の製造小売り」は、デジタル力による顧客ニーズ対応と、「捨てない社会」のマネタイズ化が今後の市場発展のカギ

上野 武昭

新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか

みさき透

不安定な市場環境で「利回り」と「信用力」の高さを併せ持つ米国地方債にチャンス=フランクリン・テンプルトン・アメリカ地方債ファンドが設定3周年

finasee Pro 編集部

著者情報

藤原 延介
ふじわら のぶゆき
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティンググループ
2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社し、サステナブル投資や欧州規制動向など資産運用に関連する情報発信を担う。1998年三菱信託銀⾏⼊社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパン。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど約25年に渡りリサーチ、投資啓蒙に従事。慶応⼤学経済学部卒。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか
不安定な市場環境で「利回り」と「信用力」の高さを併せ持つ米国地方債にチャンス=フランクリン・テンプルトン・アメリカ地方債ファンドが設定3周年

【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
金融庁が「プログレスレポート2024」の公表を休止した深いワケ 「FDレポート」との違いが出せなくなった?
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋トップに新設の単位型ファンド、バランス型人気も続く
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
ターゲットは“デジタル富裕層”―SMBCグループとSBIグループの新会社設立により「Olive」に新たな“プレミアムクラス”
アクティブファンド復権!? 中国銀行で株式アクティブへの期待高まる。「ROBO」と「純金」の評価も向上
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
ターゲットは“デジタル富裕層”―SMBCグループとSBIグループの新会社設立により「Olive」に新たな“プレミアムクラス”
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
資産形成を達成した後…「次なる課題」
静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?
【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
常陽銀行にみる株式ファンドへの逡巡、「相互関税」と「中東緊張」で様子見の中を上値に進むファンドは?
【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む
不安定な市場環境で「利回り」と「信用力」の高さを併せ持つ米国地方債にチャンス=フランクリン・テンプルトン・アメリカ地方債ファンドが設定3周年

「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら