専門家を真似るもよし、任せるもよし。「分散投資」の選択肢
講師
そんなに気落ちすることないですよ。分散投資って、やろうとすると、知識があっても結構難しいんです。そこで、いつも私がお話ししているのは、専門家の「分散投資」を真似てみませんか、ということです。
皆さんの公的年金の積立金を運用しているGPIF(ジーピーアイエフ、年金積立金管理運用独立法人)の分散投資の割合――国内外の株式と債券に1/4ずつ投資する、こんな組み合せが参考になると思います。
参加者
実際にGPIFの分散投資を真似ると、過去30年間の試算では、どんな感じになってるんですか?
講師
これまでの試算と同じ条件で、国内株式、国内債券、海外株式、海外債券にそれぞれ1/4ずつ分散投資すると、運用成績の平均値、最高値、最低値は以下のようになりました。
これを③として、先ほどの①先進国株式、②国内債券と比較してみましょう。
どうですか?
分散投資の1年後の平均値は+6%、悪くないですね。
一方、最低値は-28%。半分になることはなさそうですし、なかなか良い感じだと思いませんか?
参加者
私もこんな感じで退職金の投資をやってみたいですね。
でも、「分散投資」にはリバランス*っていうメンテナンスも必要になるんですよね?
そこまで付き合えるかどうか、ちょっと不安です。
*リバランスのことをざっくり知りたい方は、筆者出演のYouTube動画「リバランスはバランスファンドにお任せ」もご参照ください。
講師
大切なのは、投資のリスクをどこまで自分で管理して、どこから専門家に任せるか、ということ。自身で複数の資産に投資をするやり方だと、おっしゃるとおりリバランスも自分でやる必要がありますが、リバランスも含めて分散投資をバランスファンドに任せる、という考え方もあります。
他にも、GPIFの分散投資を真似るのではなく、自分自身に合った分散投資を行う手段として、ファンドラップという金融機関のサービスを利用するのも選択肢の一つでしょう。
もちろん、専門家に任せる対価として、手数料やフィーが必要になります。
参加者
自分でできないことをお願いする料金と考えると、手数料やフィーといったものも納得感が出てきますね。
講師
それはおそらく、「リスクとリターンの法則」を踏まえて、投資のリスクと上手く付き合っていくにはどうしたらいいのか、自分ごととして考えられたからだと思いますよ。
いずれにせよ、投資の基本は大切ってことですね。
参加者
これからも投資の基本、肝に銘じますね!
ありがとうございました。
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冒頭でもお伝えしましたが、「分散投資」を理解している人が一番多い、ということに、私はいつも違和感を抱いていました。というのも、「分散投資ってひと言で言うけど、実際にどうやったらいいの?」とか「自分に合った分散投資って、どんな風に見つけたらいいの?」といったご質問をよくお受けするからです。
意外と奥が深い「分散投資」のご質問にお答えするために、あえて投資の基本、「リスクとリターンの法則」から説明を試みたのが今回のコラムです。皆さんの理解に届くよう、説明を端折らずに、一段一段積み重ねたつもりです。基本的なことばかりではありますが、その基本が実は大切なんですよ、そんなことも感じていただければ幸いです。
なお、最後に手数料やフィーのことも少し触れさせていただきました。私は金融機関に勤めていますので、ある意味、自己弁護と捉える方もいらっしゃるかもしれません。でも、「手数料やフィー=悪」と単純に考えるのではなく、ここでもやはり投資の基本から考えてみる、つまり、どのようにリスクと付き合うのか、どこまで自分で管理して、どこから専門家に任せるのか、というふうに考えてみることが大切ではないでしょうか。
結果として、専門家には任せずに自分で全部やるよ、でもいいと思います。皆さんの大切なお金のことです。だからこそ、最終的な結論を出すときには、選択肢として専門家の利用も検討してみてはいかがでしょうか、というのが私からの提案です。
ご参考になれば幸いです。