第2部 バフェットの株式市場の見方
Q5:(GAFAMなど)ビッグテックカンパニーは気が狂うほど割高ではないか
バフェット:狂っているほどとは思わない。株価は金利との関係で動く。現在、米国短期国債は、ゼロ%だ。この金利という重力が軽いと、株価は高くなる。私でも、重力が80%少なければ、東京オリンピックのジャンプに出られる。現在の金利が適切とすれば、今の質問にあった会社の株価はバーゲンだ。
バフェットが、ビッグテックは割高ではなく、現在の金利水準ではバーゲンだといっているのは非常に興味深い。「金利は重力」ということは、我々もよく頭に入れておくといいだろう。
Q6:特別買収目的会社(SPAC)の拡大は、バークシャーに影響するか
バフェット:殺し屋(killer)だ。これらのSPACは、2年で資金を使わなければならない、つまり2年以内に(企業を)買わなければならないと理解している。プライベートエクイティもたくさんある。他人のお金を運用してフィーをもらうのであれば、不利はなく、いいことばかりだ。そして今は、そういうところにたくさんのお金が集まっている。いわゆるギャンブルタイプのマーケットだ。
ここでバフェットはケインズの言葉を紹介した。
バークシャー・ハサウェイのネット株主総会画面より(筆者撮影)
バフェットが好きなケインズの一般理論の第12章の言葉――これは実はウォール街のことを言っているのだが、以下の言葉を紹介した。
「事業の安定した流れがあれば、その上のあぶくとして投機家がいても害はありません。でも事業の方が投機の大渦におけるあぶくになってしまうと、その立場は深刻です。ある国の資本発展がカジノ活動の副産物になってしまったら、その発展はたぶんまずい出来となるでしょう」(『雇用、利子、お金の一般理論』講談社学術文庫より)
バフェットがこういう場で、ケインズの言葉を紹介してくれるのだからありがたい。まさに奥深い勉強ができるというものである。
Q7:ロビンフッドなど、フィンテックのトレーディングをどう見るか
バフェット:ロビンフッドの上場申請書を見るのが楽しみだ。手数料無料で、どのように収益を得ているのか。アメリカの企業は多くの富を生み出してきたが、すごいギャンブルの道具もこしらえる。初心者でもお金を持っていれば、1日30、40、50トレードが手数料なしで簡単にできる、こういうのは増えてほしくない。
バフェットが「トレーディングのやり方を、自分は知らない」といっているのは興味深い。一日に何回も売買をするやり方(トレーディング)は、ギャンブルだとしている。バフェットに言わせれば、投資は資本の提供であり、ギャンブルの道具ではない。なお、バフェットは、株式投資をする人を、投資家とは言わず、キャピタリスト(資本家)という。
Q8: 連邦議員が、自社株買いは株価操作だといっているが、どう考えるか
バフェット:自社株買いは、割安でなければ、株主にとって良くないが、割安であれば、自社株買いをするべきである。我々は自社株買いをやっている。
2021年第1四半期に65.7億ドル、昨年1年で247億ドルの自社株買いを実施。今年に入ってバークシャーの株価は25%上昇(5月14日現在)、S&P500の上昇率11%を大きくアウトパフォームしており、自社株買いも寄与しているとみられる。今後も1450億ドルの投資向け資金を抱え、自社株買いは続くだろう。
バークシャー・ハサウェイ(BRK. B)株とS&P500の騰落率(%)
筆者作成
Q9:バークシャーはたくさんの企業を保有しているが、大きくなりすぎて、経営するのが難しいということにならないか
バフェット:そういう懸念はない。経営はそれぞれの企業に任せている。非集権化している。どの米国の大企業とも違う。そして大変よく機能している。しかし、正しいカルチャーがなければ難しいと言える。
マンガー:そして、グレッグ(・アベル)がそのカルチャーを守ってくれるだろう。
ここが、バフェット亡き後の後継者が公になった瞬間だ。保険以外の電力、鉄道などの事業部門を担当する副会長、58歳のグレッグ・アベルが、バフェットの後継者となる。バフェットは、株主総会翌日のインタビューで、それを認めた。
後継に内定したグレッグ・アベル
バークシャー・ハサウェイのネット株主総会画面より(筆者撮影)
Q10:バークシャー傘下企業の原材料調達で、インフレが進んでいると思うか
バフェット:はっきりとインフレが見える。我々は値上げをしているし、他もやっている。そして受け入れられている。住宅がそうだ。鉄の価格は上がっている。人々は、お金を持っていて、買いたがっている。ほとんど熱狂的な買いだ。6カ月前には、想像できなかったことだ。
100社にも及ぶ傘下企業のアクティビティを見ているバフェットの言だからこそ、現実味を感じる。
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“バフェット節”は今年も健在であった。個人投資家はS&P500などの指数に連動するインデックスファンドでの分散投資に長期的に取り組むことが基本、また資産形成は投機ではなく投資によって(資本家になって)行われるべきであるということを肝に銘じておきたい。
そして、この二人を見ていると、人間はいくつになっても元気で、活動的でいられるということをつくづく感じる。この二人を見習って、我々も健康に気を付けて、よく働いて、社会の役に立つ人生を歩みたいものである。