第1部 バフェットの株取引に関する質問
ここからいよいよ、Q&Aとなる。主な質疑応答を、できる限りバフェットとマンガーが語った通りに紹介しよう。
Q1:昨年、安くなった時(2020年3月、いわゆるコロナショック期)になぜ買わなかったのか
※市場は、当時バフェットはどう動いているか、何を買ったか大変注目していた
バフェット:我々は株主のために誤ったことはできない。FRB(連邦準備理事会)はいい仕事をした。パウエル(FRB議長)はよくやっている。3月23日、大変機敏に動いた。3月初めころは、2、3(資金調達の)要請の電話が来たが、このFRBの緊急政策実施で、企業はいくらでも資金調達ができるようになった。
マンガー:このような局面でうまく立ち回ることは、不可能だ。
バフェット:その通りだが、振り返れば、確かにもっとうまくできた。
要は、FRBが無制限に資金供給してくれるので、企業はバフェットに資金提供の助けを求めないで済んだということだ。
Q2:銀行株をどうして売ったのか
※バフェットは、2020年3月、4月に銀行株や航空株が急落するなか、JPモルガン株、ゴールドマン・サックス株、米4大航空の株を大量に売った
バフェット:銀行株は好きだ。しかし比率が多くなりすぎた。だから売った。バンク・オブ・アメリカは10%を超えているが、他は10%を超えたくなかった。バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOは優れた経営者だ。
長年持っていたウェルズ・ファーゴも不祥事を嫌い、ほとんどを手放し、大手金融株はバンク・オブ・アメリカに一本化した感がある。
なお、ここで話は運用状況に及んだ。バークシャーの6000億ドル、7000億ドルの事業規模の中で、1.5%程度(数十億ドル規模)の取引はごくわずか。上がった株の影響度は大きくなり、(銀行株や航空株のように)下がった株の影響度は小さくなる。ちなみに、2016年に買い始め、取得コストから3.9倍も上がったアップルの昨年末の時価評価額は1200億ドル、ポートフォリオに占める比率は43%で、影響度は非常に大きくなっている。
Q3:バフェットは、長年バイ&ホールド、あるいは永久保有を旨としてきたが、ずいぶん保有期間が短くなっているのではないか?
バフェット:そうは思わない。
マンガー:多すぎる。はるかに多すぎる。
バフェット:マンガーが言うのだからそうなのだろう。
常日頃、バフェットは、「マンガーのいうことを聞いておけばよかった」と言っている。売買頻度がこのところ高くなっているのは、否定できないだろう。
Q4:バークシャーは過去15年、市場をアンダーパフォームしているが
マンガー:今の状態は、歴史上で異例の状態だ。いつも状況は動いている。我々が死んだあとだろうが、バークシャーのパフォーマンスはマーケットを上回っているだろう。
バフェット:私もそう思う。一方でS&P500インデックスファンドも勧めてきた。妻への遺産の90%はS&P500インデックスファンドだ。バークシャーに特別の思い入れがない人には、S&P500インデックスファンドをずっと持っていることを勧める。
バフェットは、一般の投資家にS&P500インデックスファンドを勧める。ここは我々にとっては、大変重要なポイントだ。バフェットがS&P500インデックスファンドを勧める理由は、二つある。一つはアメリカの将来に対するゆるぎない自信、もう一つは低コストでの運用ができるということである。