iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は税制メリットがとても大きい制度です。しかし、「お得なのは分かるけど、iDeCoも結局は投資だから損をするかもしれないことを考えると、ちょっと躊躇しています」と言われることがあります。

確かに、iDeCoの所得控除メリットで税金の負担が減っても、損をする可能性はゼロにはなりません。また、iDeCoの運用益は非課税ですが、そもそも損をしていると非課税のメリットを受けることはできません。また、iDeCoを受け取るときには退職所得控除や公的年金等控除といった税金の負担を減らす仕組みがありますが、損をしているからといって課税自体がなくなるわけではありません。

こう考えると、損をすることを気にしてiDeCoで投資の第一歩が踏み出せない人のお気持ちもよく分かります。しかし、私はいつもセミナーで「iDeCoが投資だとは思っていない」と、それまでの説明とは少し矛盾したような話を切り出します。そして、iDeCoで積立できることは何か、参加者に問いかけるよう努めています。

セミナーで使っているスライドとともにご説明しましょう。

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預金で「貯蓄」はできない以上、「証券貯蓄」と考えてみる

講師
それではセミナーの最後に、改めてiDeCoのことを一緒に考えてみたいと思います。
「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」とはずいぶん前から言われていますが、なかなか進んでいませんよね。ですが、私はそもそも、iDeCoを「投資」だとは思ってないんですよ。

参加者
え~!? 何を言い出すんですか?
さっき、「長期・積立・分散投資を、誰でも簡単にできる制度がiDeCo」だって話していたじゃないですか。

講師
おっ、ちゃんと理解されているようで、講師としてはうれしいですね(笑)。
でも、投資って言うと、それだけで構えてしまう人も多いじゃないですか。それに、自分とは関係のない別世界のことだって考えている人もいるかもしれません。
そうではなくて、皆さんの生活の中でiDeCoがどんなふうに位置付けられるものなのか、そんなことを改めて考えてみたいのです。

参加者
生活の中でのiDeCoの位置付け、ですか……。どういうことでしょう?

講師
私は、iDeCoとは「貯蓄から投資へ」ではなくて、「所得から貯蓄へ」を進めるための制度だと思うのです。つまり、所得の一部を貯蓄するためにiDeCoを利用する。こんなふうに考えるべきではないか、ということです。

参加者
なるほど。毎月決まった金額を積み立てていくってことは、「所得から貯蓄へ」と言えるかもしれませんね。

講師
以前であれば、預貯金で「貯蓄」はできたわけですが、今や超低金利時代、預貯金ではお金は増えない時代です。だから一足飛びに「投資」をすべき、というのではなく、まずは「所得から貯蓄へ」の流れを作るためにiDeCoを利用しませんか? ということなのです。
預貯金との比較で言えば、「証券貯蓄」と呼んでもいいかもしれませんね。

70代、80代まで役立つ「投資への向き合い方」が身につく

講師
さらにもう1つ。
預貯金とiDeCoの違いに、iDeCoでは「老後のお金」だけでなく「投資の経験」も積み立てられることも挙げられます。

「人生100年時代」を生きていく上では、お金だけではなく、「投資の経験」を若いうちから積んでおくことも非常に大切です。
なぜなら、受け取る公的年金の金額の規模からみて、われわれ現役世代は70代や80代くらいまで投資に向き合っていく必要があるからです。リスク性資産との付き合い方は、失敗や成功体験を積み重ねていくことで身につくもの。年齢を重ねていきなり始めようと思っても、なかなかうまくいかない人も残念ながら多いのです。
若いうちからiDeCoで積み立てた「投資の経験」が、人生100年時代で投資に向き合い続けるための金融リテラシーになる、私はそんなふうに考えています。

参加者
最後はやっぱり人生100年ですか(苦笑)。でも、言われてみれば、おっしゃる通りですね。
まずはiDeCo、やってみますね!

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このように、iDeCoは投資というよりも「所得から貯蓄」への流れを作り、投資の経験も積み立てられる制度だと捉えると、自分ごととして考えやすくなると思います。参加者の方も「iDeCo、やってみます」と言ってくれていましたが、資産形成だけでない、iDeCoを始めるメリットが1つ加わったと感じていただけるのではないでしょうか。現役世代の皆さまには、100年続く人生に向けて、ぜひ、iDeCoで「投資の経験」を積み立てていただきたいですね。