ファンドマネジャーに求められる役割は運用手法によって違う

「ファンドマネジャー」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、相場全体を見通しながら決算資料を読み込んだり、企業の経営者に話を聞いたりして有望な銘柄を発掘する姿であろう。これはジャッジメンタルと呼ばれる、アクティブファンドの代表的な運用手法である。ジャッジメンタルのマネジャーに求められるのは、相場環境を読み解き、有望な銘柄を発掘する目利き力である。

もう1つ、高度な数量分析に基づいて作られた運用モデルで、機械的に投資判断を行うクオンツと呼ばれる運用手法もある。クオンツは近年、「投資のソムリエ」(アセットマネジメントOne)や「ダブル・ブレイン」(野村アセットマネジメント)など可変配分型のバランスファンドで活用されるケースが増えているため、耳にしたことがあるという方もいるかもしれない。

クオンツのファンドマネジャーに求められるのは、先のジャッジメンタル運用のような目利き力ではなく、モデルの正確性だ。クオンツマネジャーは、運用モデルがきちんと機能しているかを常時モニターし、適宜モデルを改良している。

実際の運用に当たっては個人よりもチームを重視

よく投資信託の運用は、1人のファンドマネジャーが企業訪問から実際の運用まで行うものと思っている方がいるが、基本的に投資信託の運用はチーム単位で行われる。これは、ジャッジメンタル運用でもクオンツ運用でも同様である。

「ファンドマネジャー」と一口に言っても、運用者としての経験値や経歴はもちろん、運用スタイルや得意とする分野も異なる。経験値の異なる複数名のファンドマネジャーでチームを作ることにより、若手マネジャーの育成が可能になるだけでなく、各人の個性が良い方向に発揮されることが期待できるのである。

また、規模の大きい運用会社にはロンドン、ニューヨーク、香港など地域別に拠点があり、各拠点でファンドマネジャーが運用を行っている。例えば、同じ日本株を担当しているファンドマネジャーでも、日本国内で日本株市場を見ているマネジャーと、海外から日本株市場を見ているマネジャーでは着目するポイントが異なることがある。そこで、運用会社によっては、国を超えてチームを組成し、グローバルな視点を取り入れながら、世界中の投資家に運用商品を提供している。

さらに、ファンドマネジャーは特定のファンドを1本だけ運用していると思われがちだが、実際には複数のファンドを同時に運用していることが少なくない。規模によって差はあるが、運用会社は個人向けの商品だけでなく、年金基金など機関投資家向けの商品も展開しているためだ。より厳密に言えば、ファンドマネジャーは個々のファンド単位というより、自身が担当する運用戦略単位で担当ファンドを抱えているケースが多い。例えば、Aという運用戦略を担当しているファンドマネジャーは、同じ戦略を用いた個人向けと機関投資家向けの双方の運用を担う、といったイメージである。

一般的に、年金基金などの機関投資家は個人投資家よりも長期の投資ホライズン(投資期間の長さ)を持つ。したがって、同じ戦略であっても、機関投資家向けの商品と個人投資家向けの商品では商品性に多少の違いがある。ファンドマネジャーは、こうした点も考慮に入れながら自身が担当する商品を運用しているのである。