バイアスから解放されるためにやるべきこと
ここまで投資家が危機時に不適切な投資行動をしてしまう背景について説明しました。経験豊富な投資家ならば、このようなバイアスに陥らないのではないか、と思うかもしれませんが、残念ながら経験豊富な投資家、もっと言えばプロのファンドマネジャーであっても人間である以上、少なからずバイアスの影響を受けてしまいます。では、どうしたらよいのでしょうか。
解決策はとても簡単で、投資に人間の判断を入れないことです。つまり、積立投資やリバランスなどの仕組みやルールにのっとって粛々と運用すればよいのです。「なんだ、簡単ではないか」と思うかもしれませんが、実はルールを導入することよりも守ることのほうが大変です。実際、今回の危機に際して、せっかく事前に定めていたリバランス・ルールを一時的に停止して、株式が下がったところで買い増ししなかった企業年金もあるようです。さらに下落をするのではないか、との恐怖にとらわれて買い増ししなかったのですが、その後、市場が急回復しましたから、おそらく説明に窮する事態に陥っていることでしょう。
このような状況に陥らないためにも、ルールを導入するだけでなく、それを守り切ることが何よりも大切なのです。自分自身を律することに自信がない人は、このルールを守るためにアドバイザーを活用するのも一案です。最近、徐々に存在感を高めているIFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)などを活用してもよいでしょう。
ただし、市場のタイミングを見て投資を勧めてくるアドバイザーは、そのアドバイザー自身もバイアスのかかった判断をしている可能性があり、バイアスから逃れるという点では解決策になりません。上述のルールを愚直に守ることをサポートしてくれるアドバイザーを活用することが、バイアスへの解決策になると考えます。