不適切な投資行動を引き起こす3つのバイアス
1つ目のバイアスは損失回避です。人間は同じ額の利益と損失があったときに、利益からくる喜びよりも損失からの苦しみのほうを2倍以上大きく感じると言われています(プロスペクト理論)。ですから、たとえこのまま投資し続ければ、利益があがると思っていたとしても、「市場がさらに下落して損失が拡大したらどうしよう」と考えてしまい、売却してしまうのです。投資家の合理的な一面は、「割安になったので追加投資をしよう」と思っているのですが、なかなか行動に結びつかないのはこのバイアスが影響していると思われます。
2つ目のバイアスは身近にある情報から判断してしまう特性(利用可能性ヒューリスティック)です。今回のパンデミックのような危機時には、ニュースのほとんどが「感染者数や死亡者数が激増している」「世界各国でロックダウンが進んでいる」などの悲観的なものになりがちです。当然、ニュースは人々の目にとまる必要がありますから、ショッキングかつネガティブなニュースを報じることが多くなります(回復者数などのポジティブなニュースはまれ)。結果として、身近に存在する情報のほとんどが悲観的なニュースになり、それにさらされた投資家は状況がもっと悪くなるかもしれないと考えるようになり、損切りしてしまったり、追加投資を躊躇したりしてしまうのです。
3つ目のバイアスはバンドワゴン効果と呼ばれるものです。これは周りの行動や意見を見聞きし、それが正しいと短絡的に判断し、同様の行動をとってしまうバイアスです。簡単に言えば、「友人Xも友人Yも損切りしたんだって。私もしなくては」という思考方法です。当たり前ですが、周り人たちもバイアスにより感情的に投資行動をしてしまっているため、その意見を参考にしたからといって合理的な投資行動がとれるわけではないのです。
暴落時の不適切な投資行動を説明できるバイアスは他にもあると思いますが、私はこの3つが大きな影響があると考えています。特に、SNSが普及した現代社会においては、利用可能性ヒューリスティックとバンドワゴン効果の影響が、以前よりも大きくなっているように思います。