2020年3月の新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした株式市場の大暴落を目の当たりにし、多くの投資家は恐怖からポジションを解消、つまり損切りをしてしまいました。特に米国や欧州では、リスク許容度の低い投資家の多くがインカム狙いで投資していた社債ファンドを、雪崩を打って売却したため、3月は過去最大級の大きな資金流出が発生しました。

一方、この機を絶好の機会と捉えて投資を始めた人や追加投資をした人もいました。日本でも債券ファンドには資金流出が見られましたが、株式ファンドには大きな資金流入があり、投資信託市場全体では資金流入となりましたから、投資機会と捉えた投資家が多かったのかもしれません。

今回の世界株式の下落は、1965年以降の暴落の中で過去最速でしたが、その後の回復も極めて早かったため、結果としては下がったときに歯を食いしばって投資し続けた投資家や追加投資をした投資家が報われました。逆に損切りをした投資家や追加投資できなかった投資家には、地団駄を踏む思いの方も多かったのではないでしょうか。

投資成果の明暗を分けたものは何か?

それにしても不可解ではありませんか? 過去の多くの危機では踏ん張って投資し続けている人や追加投資をした人が今回と同様に報われており、そのような結果は様々なメディアで公表されています。にもかかわらず、「今回は過去の危機とは違う。もっとひどくなるかもしれない」と考え、損切りしてしまったり、追加投資ができなかったりした人がやはり多かったのです。

つまり、過去の分析から合理的に判断することができず、目先の不安や恐怖にとらわれてしまい、感情的に非合理的な投資行動をしてしまったのだと思われます。このような非合理的な投資行動は、投資経験によらず多くの投資家に見られる特徴であるため、経験豊富な投資家からも「今回はもっと下がると思って早めに売ってしまった」「なかなか追加投資に踏み切れなかった」との声があがっているようです。

では、人間は、なぜそのような非合理的な投資行動をしてしまうのでしょうか? なぜなら人間には、合理的に考えるのを妨げるバイアスが存在しているからです。私は、特に以下の3つのバイアスが、不適切な投資行動を引き起こしていると考えています。