米国株式市場は総じて堅調ながら セクター別ではばらつきも
こうした中、金融市場は、米国で感染第二波への警戒感が高まっているものの、各国中央銀行・政府による金融緩和策や積極的な財政政策の実施に伴う世界景気の下支え期待などから、堅調に推移している。S&P500種株価指数は、2月19日に終値ベースで史上最高値を付けて以降、コロナの感染拡大が欧米で進行する中で下落基調に転じ、3月23日に今年の安値を付けるまで、わずか1カ月足らずの間で約34%下落した。
その後は、FRBの大規模金融緩和策や、米政府の大型経済対策実施に伴う景気下支え、世界的な経済活動再開への期待が一段と強まったことなどから、上昇基調となった。7月21日時点の株価水準は、3月23日対比で45%程度上昇し、年初の水準に戻した。今回の株価調整は、極めて短期間に株価が急激に落ちた一方で、その戻り方のスピードも速いというのが特徴だ。経済や企業業績が早期に正常化するとの見方を反映した動きとみられる。
もっとも、米国株式市場全体(S&P500種株価指数)は総じて堅調ながらも、セクター別に見た場合の相対パフォーマンスは異なる。3月下旬以降の株式市場の戻り局面において、情報技術や一般消費財、ヘルスケアといった、コロナ禍で需要増が見込まれるセクターは市場全体に対して堅調である一方で、資本財やエネルギーは劣後している。情報技術では、あらゆるコミュニケーションのオンライン化(テレワーク、遠隔診療、オンライン授業、商談など)の進展が見込まれ、オンラインコミュニケーション技術や通信セキュリティー技術の向上などが期待される。一般消費財は、コロナの感染拡大により外食や実店舗型小売りの減少による影響が懸念される一方で、小売業でのオンライン販売の好調さが支えとなっているもようだ。キャッシュレスなど非接触に対応した技術の利用活性化なども期待され、小売業を巡っては、デジタル化の流れが従来にも増して進むと考えられる。
新型コロナウイルスのワクチン開発は、治験が前倒しで進むなど明るい兆しも見られているが、実用化や大量供給には、依然として時間を要するとみられる。こうした中、感染拡大を防止する観点から、社会的距離確保の措置が継続すると想定される中、新しい生活様式の実践の恩恵を受けるとみられるセクターの株価は堅調に推移する可能性があろう。ただし、米国株式市場全体が織り込んでいる経済や企業業績が早期に正常化するとの見方は、追加的な財政支援策が鍵を握るとみられ、注視が必要である。