ファンド化による低コスト運営

一般的には、ファンドを起こす場合、ある程度の運用利回りが想定されなければ資金が集まらない。しかし、今回は空き家問題という社会課題を解決するためのファンドであり、運用利回りを追求しない利他心やソーシャルマインドのある人たちを出資対象と考えることができる。ファンドの募集はクラウドファンディング型とすることで、少額出資を可能とする。ファンドで行うことは、家主との家賃交渉、管理方法、家賃支払いとする。

DIY型で入居者が自己資金でリフォームすることで初期費用を抑えることができ、管理も入居者に任せることで、空き家管理のコストは発生しなくなる。

また、賃料は固定資産税を払える額とすれば、家主の持ち出しはなくなる。入居者には固定資産税の2-3倍程度の賃料を設定することで、家賃1万円が実現するだろう。

入居者に対しては、将来的に家を買いとるオプションをつければ、所有者は空き家を売却することができる。

ファンドはあくまでも、空き家を通じて家主と入居者をつなぐ役割に徹し、サブリース賃料のみを収益とすることで、ファンドで借りる空き家の敷居を下げることができれば、制度はあれど活用されず、といったことにはならないだろう。

毎月家賃を受け取る年金代替機能による老後不安の軽減

ファンドへの出資の対象者に退職金や老後資金を蓄えた高齢者を含めることができれば、毎月微々たるものではあるが、投資収益を得ることが可能となる。そのうち、戸建て空き家は横須賀市で1万130戸、神奈川県で9万4500戸、全国で299万9200戸ある。全国にある140万世帯のひとり親世帯がもれなく空き家を借りることができるほどの量がある。

貧困にあえぐひとり親世帯の収入を上げたり、税金で生活費を補填する前に、空き家を低賃料で貸し出せば、ひとり親世帯の収入でも生活が回る可能性もある。

このモデルが実現すれば、銀行口座の中で休眠する預金を活用し、利用されない空き家を生かすファンドを組成することで、老後不安という日本で最も大きな不安の1つを解消することができると考えている。