円買い介入の効果は持続するか?過去の事例と関係者の声
今回は「円買い介入後のドル円相場展望」について解説します(スライド1)。
7月30日、円買い介入が実施された模様です。当日の高値163.74円を基準にすると、安値は157.98円と5円以上の下げ幅を記録しました。ただ、本日(31日)は概ね160円台前半まで持ち直しています。一方、本動画を収録する直前に再び為替介入と思しきドル円の急落がみられており、現在158円台まで下落する場面がみられました(スライド3)。
改めて過去のドル円相場とドル指数を見ながら介入の効果や持続性を確認します。➀や➃、➄および➇、➈の介入の後、ドル円はさらに続伸しています。この前後のドル指数をみると、いずれもドル高であったり、ドルが小じっかりと推移している場面です。このような地合いの下では円買い介入の効果はかなり減殺されると考えられます。一方、➁、➂や➅、➆では介入後、ドル円は20円以上も下落しています。いずれの場面においてもドルそのものが下落に転じた場面でした(スライド4)。
より細かく実際のデータを振り返りますと、介入当日は総じて5円から6円程度の下げ幅を記録しています。一方、ドル高の局面で実行された①の為替介入の場合、13営業日後に介入当日の高値を回復しています。また、➃や➄、➇の介入でも、概ね1カ月から2カ月程度で介入当日の高値を回復していることがわかります。現在も年内の利上げ観測の下ドルが底堅さを保っており、8月から9月にかけ、介入当日の高値である163円台後半を回復する可能性が高いと考えられます(スライド5)。
ここで7月30日の介入に関する関係者のコメントや報道をまとめておきます。まずNHKは関係者への取材として政府日銀が介入を実施したと断定的に保持ていますが、片山大臣は明言を避けています。一方、三村財務官はノーコメントとしつつも「アメリカから精神的な支援を超える支援を得ている」と発言しており、かなり気になるコメントです。その他、市場筋の情報として米国の通貨当局がレートチェックに踏み切ったとも報じられています(スライド6)。
ドル高・円安圧力は継続?日米金融政策の現状
さて、今週はFOMCで政策金利の据え置きが決まりました。大方の予想通りではありましたが、事前に約3割程度のサプライズ利上げを織り込んでいただけにその反動でドル安が進みました。また、ウォラー議長もインフレに対峙する姿勢を示しつつ、今後の政策の方向性について明言を避けたことから、ややハト派との受け止めが広がったようです。ドル指数は最近の上値目途である102を上抜けすれば、再びドル高相場入りする可能性が高いと指摘してきましたが、6月の雇用統計や消費者物価指数が相次いで予想を下回ったことから一旦、その上抜けに失敗しています。その後、原油価格の上昇を受けた「有事のドル買い」の再燃やFOMCに向けた利上げ観測の高まりによって改めて102を試しましたが、再び失敗した格好です。現在、100近辺で推移していますがドル円の直近高値(163.99)の更新には、ドル高が必要と考えられ、目先についてはややハードルが高くなりました(スライド7)。
今週、日本では食料品の消費税を2年間、1%まで引き上げる方針が固まりました。一部ではその財源に対する見方に疑念も持たれていますが、日本の一般会計税収は6年連続して過去最高を更新しています。仮に2019年度の税収がそのまま続いた場合と比較しますと、これまでの6年間で上振れした税収を累計しますと約80兆円に達します。食料品の税率を引き下げた場合の税収の減少額は約8兆円から9兆円とされており、税収が増えた規模に照らせば、財源が不安視される可能性は低いと考えられます(スライド8)。
実際、6月の下旬以降、いわゆる「骨太の方針」ショックによる長期金利上昇と円安が続いた場面で拡大したタームプレミアムも落ち着きを取り戻しています。その結果、長期金利の上昇も勢いを失っています。7月の上旬に見られた円安の動きにも歯止めがかかっている格好といえ、円の側からみても、ドル円が改めて高値を伺うハードルはやや高くなったと考えられます(スライド9)。
ただし、米国については個人消費指数物価指数の伸びが前月から縮小したとはいえ、依然として目標2%を大きく上回ったままです。今回の据え置きとの決定に3人の地区連銀総裁が反対票を投じましたが、FRB理事の中で政策の方向性に強い影響力を持っているウォーラー理事も、7月に利上げが必要となる可能性に言及しています。理事会の足並みをそろえるために反対票は投じませんでしたが、潜在的には利上げを志向しているとみられ、年末までに1回の利上げがあると考えられます(スライド10)。
今週、日銀も政策金利の据え置きを決めましたが、引き続き現状を金融緩和的と評価し、その度合いを調整していく、即ち利上げ継続方針を堅持しました。また、利上げのタイミングやペースについて、今回は中東情勢、AI関連の需要、そして為替相場といった3点を明示しました。中でも、円安は利上げの前倒しに直結すると考えられます(スライド11)。
ところで、日銀のいう金融緩和の度合いとは、消費者物価指数の伸びと政策金利の差と見ることができます。現在、両者の差は縮小しつつありますが、年末に向けてインフレ率も2%に向かって再び上昇する可能性が高い情勢です。金融緩和的な状況、すなわち短期の実質政策金利がマイナス圏にとどまるとみられ、その間、円安圧力も根強く続くと考えられます(スライド12)。
年末までの日米利上げ時期とドル円の今後の展望
日米の利上げ時期について少し考察を加えておきましょう。米国については利上げを決定する前に、もう少し労働市場の改善を見届けたいはずです。このため9月の利上げは現状では考えにくいと言えます。因みに、8月下旬にカンザスシティー地区連銀の経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホールが開催されます。従来であればFRB議長からここで今後の金融政策の方向性についてある程度のヒントが示されることが通例となっていました。しかし、ウォーシュ議長は今後の方向性について事前に示すことを良しとはしていません。
従って、今年のジャクソンホールにおいて金融政策に関するヒントが示される可能性は低いでしょう。次に10月のFOMCは中間選挙の直前です。よほど差し迫ったインフレとなっていない限り、おそらく政策の変更は回避されると思われます。従って、潜在成長率を上回る経済成長が続く限り、年末12月には利上げに踏み切ると考えられます。日銀については、前回利上げから半年後となる12月利上げがコンセンサスです。ただ、為替が円安に触れれば10月の前倒し利上げの可能性も十分でしょう(スライド13)。
では来週のポイントです。経験則に照らせば短期の実質金利がマイナス圏にとどまる限り、円安圧力は根強いと言えます。一旦、ドル安に転じたとはいえ、年内の利上げ観測を手掛かりにドルも底堅さを維持すると考えられます。ドル円は介入当日の高値(163円台後半)を1ヶ月から2カ月以内に回復する公算が大きいと考えられます。もっとも、米国も円が過小評価されているとしています。レートチェックを含め日米連携の可能性に要注意です。また、「骨元の方針」後の長期金利上昇や円安の流れも沈静化しています。ドル高の勢いが続かないのであれば、高値163.99を更新するハードルも高いと考えられます。その点、来週は雇用統計が重要です。現在、米国の景況感は決して悪くありません。雇用統計が予想を上回る場合、ドル高が再燃し、163円台後半の直近高値に再接近する可能性も十分考えられます(スライド14)。
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