ワンルームに入らない家具

家に戻った卓弘は、喪失感と怒りにのみ込まれていた。完全に関係が終わったことへの喪失感は、時間が経つと薄れていったが、家具代の半分を払わないと言われたことへの怒りは、逆に増していった。

卓弘はスマホを取り出して、弁護士にお願いして請求をしようかと考えた。しかし調べた結果、取り返せるお金よりも弁護士費用や手続きにかかる費用のほうが高くなると分かった。

「なんで俺が損しないといけないんだよ……!」

結局、卓弘は諦めざるを得なかった。

数日後、着払いでベッドや収納棚が届いた。高額な送料を支払い、配送員と一緒に運び込もうとしたが、大きな荷物は狭い玄関を通らなかった。

「これ以上はどうすることもできないですね」と気まずそうに言った配送員に言葉を返すこともできず、卓弘は玄関前に置かれた家具を前にただ立ち尽くすことしかできなかった。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。