観月の実家へ向かう卓弘

その週の土曜日、卓弘は観月の実家に向かった。見慣れた家の前に立ち、2階の窓を見上げた。以前なら何のためらいもなく押していた呼び鈴が今日はすごく遠く感じられた。

呼び鈴を押してしばらくすると、玄関の扉がわずかに開き、観月が顔を出した。久しぶりに観月が応じてくれたことがうれしくなり、卓弘は歩み寄ろうとした。しかし観月は怯えるような目をこちらに向けてきた。

「どうして来たの……?」

「そんなこと言うなよ。電話をブロックされて話ができなかったんだ。だったら来るしかないだろ。こんな形で終わりなんて俺は認めないぞ」

観月は扉を開けきらず、首を横に振った。

「話し合っても、もう決めたことだから」

「俺はまだ納得してないって言ってるだろ。せめて理由くらいちゃんと話せよ」

卓弘が近づくと観月は一歩、身を引いた。きっと反射的な些細な動きだったが、だからこそ卓弘はショックを受けた。

「……分かった、話す。でも怒らないで聞いててね……? 卓弘さん、いつも自分の意見を突き通すところがあったでしょ? おばあちゃんにお土産を買って帰るときに、柔らかい羊羹が良いだろって言ったりとか」

「いや、あれは依子さんのことを考えて」

自分の気持ちを伝えようとすると、すかさず観月が制した。