同棲を拒んだ本当の理由

「それだけじゃないの。おばあちゃんを1人にできないって言っても、通販でどうにかなるとか、大げさに考えるなって言ったでしょ……。我慢するのは嫌だ、ルールを決めるって。もしこのまま一緒に暮らし始めたら、私とおばあちゃんの暮らしがめちゃくちゃにされるんじゃないかって思ったの」

「……考えすぎだよ。3人で生活していくために、話し合いをしようとしただけじゃないか」

「今だって卓弘さんは、自分がいかに間違ってないかを言うだけで、私たちがどう感じていたかとか、これまでどんな生活をしてきたかとか、寄り添って考えようとしてくれないでしょ。いつも自分本位なんだよ」

卓弘は拳を握りしめた。

「だったらそのときに言えば良かっただろ……⁉」

観月は何も答えなかった。それが何よりの答えだった。

「……そうかよ。だったらせめて、家具の金の半分は出してもらうぞ。そっちの家に越すということで、2人で相談して買ったんだ。当然のことだよな?」

しかし、観月は首を横に振った。

「家具は卓弘さんが決めて、卓弘さんが買ったものだから、そのまま送ります。そのあとどうするかはそっちで決めてください」

「ふざけるな……! 処分するのにも金がかかるんだぞ……!」

すると玄関が少しだけ開いた。そこには杖を突いて立っている依子の姿があった。

「観月も悩んだ末に決めたことなんです。お願いですから、帰ってもらえないですか?」

いつも気さくに話しかけてくれた依子が丁寧な口調でお願いをしてきた。卓弘は依子の他人行儀な口調に衝撃を受け、言葉が出なかった。

観月が最後にゆっくりと口を開いた。

「あの家具を2人で相談して買ったって、本当に思ってるんですか……?」

「……どういう意味だよ?」

心の底から出た疑問だった。しかし、誰もその答えを教えてはくれなかった。