「インフルエンサーとしての人気が落ちてきて」

ただ、結果的に壮一郎の忍耐が功を奏した。

それからさらに2週間ほど経ったある日、柳原壮一郎は、管理組合の理事、小川貴久から説明を受けた」

「512のあのインフルエンサーの話なんですが、退去していったそうですよ」

「え?」

壮一郎は驚いた。かなり強気の性格だったので、こんなあっさりと解決するとは思っていなかった。壮一郎の胸中に安堵の思いが広がっていく。

「何でも、インフルエンサーとしての人気が落ちてきて、タワマンの家賃が払えなくなっていたらしいよ」

小川貴久は言った。

「あんたに対して暴言を吐いたのも、収入が減って追い込まれていたせいだったんじゃないかね」

柳原壮一郎はようやく納得がいく思いだった。深夜に騒いで迷惑をかけているのは、インフルエンサーのほうで、逆ギレするのはあまりにも理不尽な対応だと腹を立てていた。

が、それも、お金に困っていて配信収入を得ようと必死だったから、というなら理解しやすかった。

「とにかく、もうこれで大丈夫。安心して寝れるよ」

小川の言葉に、壮一郎はまだ不安の色を隠し切れなかった。

「けど、また別の住人が入るんでしょう。その住人がまた大騒ぎしたら……」

「さすがにオーナーにきつく言っておいたから、次の住人は大丈夫だろうさ」

小川が確約し、柳原壮一郎はようやく本当の意味で一安心したのだった。

 

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。