ドル円の行方を左右する「ドル」の地合い
ここで、改めて2022年以降のドル円とドル指数を振り返ります。このドル指数は円を除いて再計算したものです。例えば、2022年9月22日(図中➀)および2024年4月29日、5月1日の介入後(同➂)もドル円は上昇しています。ドル指数をみるとこれらの場面ではドル高またはドルが横ばいで推移していた時期です。
一方、2022年10月(同➁)および2022年7月(同➃)の介入後、ドル円は20円前後も下落しています。いずれの時期もドルそのものが下落していたことがわかります。従って、円買い介入後のドル円の行方を展望する上では、ドルそのものの地合いが重要です。なぜなら、ここからドル高地合いが訪れるのであれば、円買い介入が繰り返される場合でもドル円はやがて160円台を回復するとみられる一方、ドル安に転じれば、日本の当局が介入するまでもなく、ドル円は軟化すると考えられるからです(スライド7)。

米国の労働市場は底入れ 、FRBは様子見スタンスへ
そこで米国の景況感から金融政策を展望しておきます。ダラス地区連銀が公表しているウィークリーエコノミックインデックスによれば、米経済は5月7日時点で前年比2.7%成長という底堅さを保っていますです。これは10種類の日次及び週次のデータから算出されるものです(スライド8)。
この内、ウェイトの高い指標をいくつか見てみましょう。まず、個人消費は堅調な株式相場による資産効果を支えに底堅く推移していることがわかります(スライド9)。
また、失業保険継続受給者数も昨年の終盤以降、低下傾向を辿っており、労働市場に改善の兆しが見受けられます(スライド10)。
生産面を鉄鋼生産でみても足元で高い伸びを示しています(スライド11)。
また、今週は3月の雇用動態調査も公表されています。そこで失業者に対する求人件数の倍率をみると、低下傾向に歯止めがかかりつつあるように見受けられます。これはパウエル議長が重視しているとされています(スライド12)。
今週は雇用統計を含む多くの労働関連の指標が発表されました。この内、製造業ISM景気指数の雇用指数は前月から低下しました。製造業の雇用者も若干減少しており、製造業は低調です。また、チャレンジャー人員削減数も予想を上回りました。ただ、ISM非製造業景気指数の雇用指数は前月から大きく改善し、ADP雇用統計も予想こそ下回りましたが、前月から大幅に拡大しました。
また、雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る増加を記録しました。広義の失業率(U6)が上昇しており、前月比で見た平均時給の伸びも前月から横ばいと、全体として必ずしも強い結果とまでは言えません。それでも、前年比の平均時給の伸びは加速しており、週平均労働時間も若干拡大しています。以上を踏まえると米国の労働市場の悪化は一巡し、徐々に底入れしつつあると考えられます(スライド13)。
実際、ダラス地区連銀が24種類の労働関連の指標から算出する労働市場情勢指数(LMCI)のMomentum(モメンタム)が2カ月続けてプラスに浮上しています。これは労働市場が改善しつつあることを示唆しています。5月13日日本時間午前1時に4月分が発表されます。3カ月続けてのプラスとなるか、大いに注目です。
以上を踏まえるとFRB議長交代により、政策スタンスが変化する可能性はあるものの、FRBは当面様子見を続けると考えられ、金融政策に起因するドル安は考えにくい状況です。もっとも、ECBやBOEにようにFRBの利上げ期待が高まっているわけでもありません。ドル高相場の到来も見込みにくいと言え、ドルはやや横ばい圏での推移が続くと考えられます。この為、ドル円についてもしばらくの間、方向感が出にくくなると考えられます(スライド14)。
