みやびに切り出した「お金の話」

家事をしながら何度か考え、それでもやっぱりおかしいと思った絵美はその日の夕食後にみやびに今朝のことを聞いてみた。

「……ねえみやびちゃん、お小遣いっていつもあれくらいもらってるの?」

リビングテーブルに座って、スマホを触りながらみやびはうなずいた。

「うん。そうだよ」

「……あのお金、何に使ってるの?」

「友達と遊びに行ったときにお菓子を買ってあげたり、洋服を買ったりしてる」

確かにみやびの部屋にはたくさんの服がある。てっきり宏臣が買ってあげているのだと思ってばかりいたから驚きを隠せなかった。

「パパは何て?」

「必要なときは言いなさいって」

「そう……」

これが普通なのだろうか。ひょっとすると自分が平凡な庶民だから、宏臣とみやびの生活を理解できないだけなのかもしれない。

絵美がそんなことを思っていると、みやびがスマホで開いているキラコレタウンでゲーム内通貨であるダイヤを迷いなく買っていくのが見えた。

「みやびちゃん、それは?」

「パパのクレジット登録してあるから。これも好きに遊んでいいって言われてる」

さすがにこれはまずいのではないかと絵美は感じた。こんな生活を当たり前のようにやっていたら、大人になったときみやびが苦労するに決まっている。

「ね、ねえ、次からお小遣いはもう少し減らすようにしない? 例えば1カ月で1万円とかさ。それだって私は十分多いと思うんだけど……」

「意味分かんない。これは私とお父さんが決めたことなの。なんで変えられないといけないの?」

「でも、お金って大切なものだし、このままだとみやびちゃんが将来困ったりするんじゃないかなって」

「そういうのウザい。私は別に困ったりしないもん」

冷たく言うと、みやびはリビングを出て行ってしまった。小さな背中を追いかけることもできず、絵美は遠くのほうで部屋の扉が閉められる音を聞いていた。

●バツイチ子持ちの建築事務所社長・宏臣と婚約した絵美は、10歳の娘・みやびとゲームを通じて打ち解けるものの、小学生に3万円のお小遣いとクレジットカード使い放題という金銭感覚の違いに戸惑い、思い切って口にした提案は「ウザい」と一蹴されてしまう…… 後編【「目をそらしてただけかも」娘に3万円を渡し続けた社長が認めた“歪んだ親子関係”の末路】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。