日銀利上げ観測の後退と政府・米側の思惑
年初来のドル円およびクロス円をみましょう。先述した通り、ドルも円も弱いとクロス円が堅調に推移します。豪ドル円は年初来で約9%も豪ドル高円安となっており、ユーロ円は史上最高値を更新しました。また、スイスフラン円も史上最高値まであと10銭まで迫る場面がみられています。第77回「ドル安ノットイコール円高」でお伝えした通り、有事のドル買いが剥落したからといって円高になるわけではありません(スライド7)。
このように円がさえなかった一因が4月の会合における日銀の利上げ観測の後退です。今週13日、信託大会において代読された植田総裁のメッセージに、4月会合での利上げ向けたメッセージはありませんでした。原油価格の上昇が価格を押し上げる側面と景気に対する下押しを通じ、価格を下押す圧力が働く側面が述べられていました。全体としてはやや慎重なトーンであったと考えられ、先週末(10日)時点で5割を超えていた利上げの織り込みが急低下しました。
また、物価高を抑える観点で円安を抑制するための利上げを「一つの選択肢」と発言した赤沢大臣に対し、高市首相、片山大臣が牽制したと報じられています。政府サイドはこの戦時下での利上げに神経質になっていると考えられ、こうした考えは当然日銀にも伝わっているでしょう。これまで慎重に正常化を進めてきた植田総裁だけに、そうした政府の意向に反して、利上げに踏み切る可能性は非常に低いでしょう。
さらに片山大臣が米ベセント財務長官と会談した際、金融政策の話題は出なかったと発言しています。ベセント財務長官は日銀が正常化を進めれば自ずと円安は是正される、即ち日銀は正常化を進めるべき、との考え方です。その長官との会談で金融政策の話が出なかったということは、今月の会合で日銀が利上げを見送ることについて米側も了承したとみることができます。そして利上げを送った場合に円安が進んだ場合、日米間で緊密な連絡をとることで一致したというのです。
先週末まで今月会合での利上げの可能性が非常に高いと予想していましたが、今週の一連の動きを踏まえ、利上げを見送るとの予想に修正します。もちろん利上げを見送った場合でも円安に配慮し、植田総裁は利上げを続けていくスタンスを強調すると考えられ、タカ派的な利上げ見送りを演出するでしょう(スライド8)。
