人のためになる仕事がしたい

その日以来、雅樹は毎回、炊き出しに参加するようになり、家でも楽しそうな笑顔を見せる回数は増えていった。そして休職をしてから2カ月が経ったとき、雅樹から話があると言われてダイニングテーブルに対面して座った。

「……実は会社を辞めようと思ってるんだ」

雅樹の決断に真子は驚きと安堵を覚えた。

「……良かった。前は嫌がってる感じがしたから」

「……やっぱり収入としては仕事は続けた方がいいと思った。宏明の将来のことだってあるしさ……」

だから雅樹は渋っていたのかと納得する。

「そういうのは気にしなくて良いのよ。私だって育児をする必要がなくなって時間ができたんだから。パートをしようかなって考えていたところだったし」

雅樹はゆっくりと頭を下げた。

「……いろいろと迷惑をかける。でも俺は辛くて仕事を辞めるわけじゃないんだ。ボランティア活動をしていて、俺は人のためになる仕事がしたいと思うようになったんだよ」

そう言って雅樹はスマホで求人募集の記事を見せる。そこには生活支援を業務にしているNPO法人の募集があった。

「ここに入れるかどうかは分からないけどさ……」

真子は首を横に振る。

「大丈夫。あなたのことを必要としてくれる人はたくさんいるわ。そして人助けなんて雅樹にぴったりの仕事だと思うから」

真子がそう言うと雅樹は少し照れくさそうに笑った。

「……うん。やれるだけやってみるよ」

どんな環境であっても雅樹が笑ってくれているのであればそれで問題ないと真子は心から思った。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。