ボランティアに参加した雅樹
雅樹は診断書を会社に送り、会社側からは3カ月の休職が認められ、基本的に家でゆったりとした時間を過ごすことになった。ただ何もしないのは申し訳ないと思ったのか、料理を手伝ってくれるようになり、最近はその料理にハマりだしている。何か趣味のようなものが見つかるとそれは良いんじゃないかと思い、真子は雅樹を温かく見守っていた。
昼ご飯を2人で食べた後に真子は炊き出しのボランティアに向かうための身支度をしていると、そんな真子を見て雅樹が質問をしてきた。
「あれ? 買い物?」
「ううん、前に言ってたじゃない。炊き出しのお手伝いをしてるって」
真子の返事を聞いて雅樹はしばらく考えた後に聞き返してきた。
「それって俺も行ったらダメかな?」
「え? いや別にいいと思うけど……」
「そう。じゃあ俺も着替えるわ」
雅樹が手伝いに来てくれたことにみんながありがたいと歓迎をしてくれ、加奈子にいたっては手早く雅樹に作業を教えてくれた。
「今日は豚汁とおにぎりを出す予定だから、雅樹さんは大鍋を混ぜる役をやってもらっていいですか? 重たくて男の人じゃないと無理なのよ」
「はい、わ、分かりました」
そこから雅樹は豚汁作りを手伝い、路上生活をしている人たちに温かい料理をたくさん振る舞った。
作業をしているときの雅樹はとても生き生きした顔をしていて、家で見せている顔とはまた違う表情をしていた。
ひと通り料理が行き渡り、一段落をしていると1人の男性がこちらに近づいてきた。
「ありがとうございました。おかげで今年もなんとか生きていけるよ」
男性は嬉しそうな笑顔で雅樹に軽く頭を下げた。
「いえ、そんなおおげさですよ」
それだけ告げて男性は満足そうな顔で公園から去って行った。
雅樹は男性の背中を見つめ、そして目の前で美味しそうに豚汁を食べている他の人たちをじっと見つめていた。
「どうかしたの?」
「……なんか嬉しくてさ。こんな俺でも誰かの役に立てたんだなって思うと」
雅樹の声は震えていた。真子は雅樹の腰をぽんと叩く。
「あなたはずっとたくさんの人の役に立っていたの」
「……会社ではずっと上から怒られて下からは疎まれてさ。そんな仕事ばっかりだったから。俺があの会社にいて感謝されるなんてことは何にもなかったから」
ずっと雅樹は会社がうまく回るために不満のはけ口として利用をされていたのだろう。
真子はそれ以上何も言えず、もう一度雅樹の腰をぽんと叩いた。
