光子が義母に伝えた結論

当選金を受け取ってから1週間後、春枝が再び我が家にやってきた。前よりも決意を秘めた顔をしていて何が目的かすぐに分かった。リビングのテーブルに座ってすぐに春枝は本題を切り出す。

「それでお金の使い道は決まった?」

「……そうですね。はい、一応は」

「……何に使うのかだけ教えてくれる?」

光子は春枝を見据えて答えた。

「お義母さんのおっしゃるとおり家のリフォームに使いたいと思います」

光子の答えを聞き春枝は目を丸くする。

「え……?い、いいの……?」

「もちろんです。それが一番いいことかなと考えました」

春枝はゆっくりと頭を下げる。

「……本当にありがとう。いろいろとしつこくお願いしてしまって申し訳なかったわ」

「いえ、これは私が決めたことですのでお気になさらないでください」

光子は正直な気持ちを答えた。

「ちなみに他にはどう使うとかは考えたの?」

光子はしっかりと頷く。

「はい、それで残りのお金はすべて寄付しようと思います」

「……え?」

春枝は口を開いたまま固まった。

「地域医療介護振興基金というのがありまして、そこにリフォームに使う以外のお金はすべて寄付をしました。それでこの地域の人たちが少しでも良い医療や介護を受けられたらいいなと思いまして」

「……そ、それは良いことだと思うけど、ど、どうして寄付なんて……」

驚く春枝に光子は説明をする。

「よくよく考えたら、買って当たるかなって考えるのが楽しかっただけなんですよ。でも実際に当たってみたら、お金を使うあてもないし、持っていてもあんまりいいことないなって。だったら、使う必要があるところに渡そうって話し合ったんです。お義母さんの家と、募金。それが私たちの答えなんです」

「それは、立派だけど……」

春枝はやや不満そうに唇をとがらせていた。

分かってもらえるとは思ってはいない。けれど、何事にも分相応というのはあるし、この決断が家族の円満な関係を守るためのものであることを、光子は信じている。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。