冷静に言葉を交わすも…

さすがにこのまま放置しておくとよくないと思い、仕方なく光子が自ら春枝に電話をかけた。

「お義母さん、今日はすいませんでした。ついカッとなって嫌なことを言ってしまいました。ただお義母さんたちのために使うのが嫌だとかそういうことじゃないんです」

「……いえ、こちらもごめんなさい。ちょっとびっくりしてしまってね。光子さんがそんな人じゃないっていうのは分かってるわ。何度もうちに顔を出してくれてるし、本当に感謝をしてるのよ」

春枝に気持ちが伝わったことで光子は安堵する。

「当選金の使い道ですけど、いろいろと将来のことを考えて決めさせてもらおうと思います。まずは当選金を受け取ってから夫と相談をしますので」

「……うん。それは分かってる。あなたたちの将来がまずは一番大事だから。……でもね、私たちもこのままではこの家に住めなくなるかもって思ってるのよ」

軽くなった心がまた重くなる。お金のことになるとどうしても春枝は簡単に引き下がってはくれなかった。

「……大変なのは分かっています」

「2人で話し合って決めてほしいってのは本当なの。でも少しだけでいいから私たちのことも考えてほしいって言ってるだけ。もちろん迷惑をかけているのは自覚しているわ」

「いえ、そんな……」

これ以上光子は話すことはないと思って電話を切った。

電話を切って光子は両手で顔を覆った。

この先当選金をどう使うかは泰と話し合って決めるつもりだった。しかし春枝たちにも使わないと関係性はさらに悪くなってしまう。使いたくないわけじゃない。

ただ今後も同じようにお金の無心があるかもしれない。

人の欲望というのは底なしなのだ。

仮に揉めれば、必ずしこりの残る決着になってしまうだろう。

そんな未来を光子は望んでいなかった。それを避けるためにはどうしたらいいかを考え、光子はある考えを思いついた。