荒れ果てた妹の部屋

日曜日にさつきは電車で由利が住んでるアパートに向かった。駅からはスマホを頼りに歩き、目的地のアパートに到着する。

古びたアパートでセキュリティなんてものは全く無い。年頃の女が一人で住むのにはあまりにも心許ないように感じた。家賃だってかなり安そうだった。正社員で働いてるはずなのにケチりすぎではないかとさつきは思った。

さつきは由利が住んでいる103号室に向かった。ところどころ塗装が剥がれた扉を見て、思わずぎょっとした。

郵便受けから郵便物が飛び出していた。終盤のジェンガのような気持ちで封筒を1つ抜いてみると、督促状と印字されてある。差出人は消費者金融。それだけで由利がどういう生活をしているのか理解した。

さつきは103号室のチャイムを鳴らした。しかし応答はない。

「由利、いないのー?」

さつきは半ばやけくそな気持ちで扉を叩いた。するとやがてゆっくりとドアが開き、奥から寝癖まみれの由利がヘラヘラと笑って顔を出してきた。

「久しぶりだね、お姉ちゃん」

見るからにだらしない生活を送っている由利にさつきは鋭い視線を向ける。

「ちょっと中に入れて。話があるから」

由利は少し嫌そうな顔をしたが頷いて中に招き入れた。部屋に足を踏み入れて、さつきは言葉を失う。見るも無惨な荒れ果てた状態だった。

一体何があったのかと、さつきは頭を抱えたくなった。

●母に頼まれ6歳下の妹・由利の様子を見てくるように頼まれたさつき。久しぶりに会った由利は荒れ果てた生活をしていた。一体、由利に何があったのか…… 後編【「姉さんに比べて苦しかった」正社員と嘘をついた裏で派遣契約打ち切りと友人の裏切りで借金を抱えた妹…1年後「予想外の報告」】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。