未公開市場へのアクセスが、投資家の分岐点になる時代
米国企業における未上場段階での成長は、AI企業に限ったものではない。宇宙、クリーンテック、次世代原子力など、今後10年のイノベーションを牽引する有力企業の多くが、未上場のまま巨額の資金調達と事業成長を遂げている。
その背景には、米国の大手ベンチャーキャピタル(VC)の存在がある。米国の市場調査会社シービーインサイツ(CB Insights)が選出するVCの全米トップ20には、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz、a16z)、GV(旧グーグル・ベンチャーズ)、アルムナイ・ベンチャーズ(Alumni Ventures)などが含まれており、これらのVCは、創業初期から有望企業に出資し、その成長を長期にわたって支えてきた。
インデックス投資だけでは捉えきれない世界
日本では、長期・積立のインデックス投資を中核とする資産形成が推奨されてきた。その堅実さは否定されるものではないが、現在の市場環境では、上場株のインデックス投資だけでは捉えきれない世界が広がっている。
かつてのGAFAMのように、上場後に急成長する企業は今や少数派である。むしろ今後のGAFAM候補は、未上場のうちに急成長を遂げ、VCファンドへの投資を通じて機関投資家のポートフォリオに組み込まれ、株式公開を迎える可能性が高い。
こうした状況において、信頼できるVCを通じて未上場企業に早期から投資できるかどうかが、個人投資家にとっても資産形成における分岐点となりつつある。
「投資の格差」を縮めるには
未公開市場の恩恵を享受できるのは、これまで一部の機関投資家や超富裕層に限られてきた。しかし近年、日本でも個人投資家が一流のVCを通じて未公開企業にアクセスする選択肢が生まれつつある。
これは単なる資産クラスの多様化にとどまらない。“インデックスの外側”にあるリターンの源泉に、公平にアクセスできるかどうか──それが、今後の日本における資産形成を左右するひとつの鍵になるはずである。