――マクロ経済をどのように見通せばよいのでしょうか。
経済統計はその性質によって、「ハードデータ」と「ソフトデータ」に分けることができます。
ハードデータはGDP成長率や物価指数、鉱工業指数など、経済活動の結果を集計したデータです。対して、ソフトデータは調査機関が行うアンケートの結果を用いて、景況感など経済活動の方向感を把握するデータです。
昨今の米国での動きを見ると、GDP成長率は堅調ですが、投資行動に関する調査結果は軟調です。つまり、ハードデータとソフトデータの間の乖離が広がっているのですが、これは早晩、収斂していくでしょう。それは、GDP成長率などハードデータが軟調になることで引き起こされるものとみています。
ただ、株式でも債券でもそうなのですが、実際に投資する際にはマクロデータの分析よりも、個別銘柄レベルでの分析、具体的に言えば、それぞれのバリュエーションをしっかり吟味することが大事です。というのもバリュエーションは往々にして本源的な価値を反映できていないことがあるので、それを分析したうえで、取るべきリスクか、取るべきではないリスクかを判断するべきだと考えています。
――今年後半から来年にかけてのマクロ環境の見通しを教えていただけますか。
われわれは長期投資家ですから、目先の短期的な見通しには囚われたくないと常に考えています。恐らく米国の成長率はやや鈍化し、インフレ率はやや高くなると見てはいますが、長期的視点を忘れず、有望な投資機会が存在しているマーケットにベットしていきます。
国によって投資機会が期待できるところ、期待できないところはありますが、ポートフォリオの観点としては、米国よりも他の国・地域にシフトさせていくことになるでしょう。現状、米国は多額の財政赤字を抱えていますし、ドルにとって逆風になりそうな課題をいくつも抱えているからです。
また、米国の株式市場は、「マグニフィセント7」に見られるように、少数の銘柄に対する集中度が異様なまでに高まっています。この傾向はいささか危険であり、米国株式への投資比率を、対ベンチマークで多少、引き下げる方向で見直す必要があると考えています。