4月のトランプ関税導入騒ぎで株価が急落し、さらに足元では日本の長期金利が17年ぶりの高水準に上昇している。「ABUSA(米国以外ならどこでも)」という造語も登場するなか、世界のマーケットは今後、どうなっていくのか。米国に本社を置くグローバルな長期運用会社、MFSインベストメント・マネジメントCEOのテッド・マロニー氏に、話を聞いた。

 

MFSインベストメント・マネジメント
CEO
テッド・マロニー

長期的な視点でマーケットをみる重要性

――今年前半のマーケットを振り返り、印象的なことはありましたか。

マーケットのボラティリティがさまざまな方向で高まったという印象を強く受けています。昨年末から今年の年初にかけては、地政学リスクの高まりで株価は調整したものの、マクロを好感して2月にかけて反発しました。

しかし、その後はトランプ大統領が矢継ぎ早に打ち出した政策に対する懸念や、とりわけトランプ関税の影響により、株価は大きく下落しました。

このような株価急落を目の当たりにした時、多くの投資家は我先にとポジションを縮小し、損失が拡大するのをできるだけ抑えようとします。しかし長期投資家にとって、このようなマーケットの急落はむしろ歓迎すべき投資機会です。長期的視点に立てば、株式や債券が持つ本源的な価値が大きく変わるようなことはないので、マーケットが急落すれば、本源的な価値を安い価格で買えるチャンスにつながるからです。

もうひとつ、マーケットを見るうえで留意しておくべきは世界主要国のインフレ率の推移です。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、世界主要国の中央銀行が実施した大幅な緩和政策により、インフレになりやすい環境が醸成されています。金融政策はマクロ経済に大きな影響を及ぼすので、今後、各国中央銀行がどのような金融政策をとってくるのかには注目するべきでしょう。

インフレに大きな影響を及ぼす労働コストにも注意が必要です。生産拠点の国内回帰を進めるなど米国で内向きな政策が続いているため、国境を越えた労働コストの裁定が働きにくくなっています。このことは、インフレの要因として働くと考えられます。