60代だった父を襲った突然のくも膜下出血

父がくも膜下出血で倒れたのは、昨年の夏。野口君の進言から数カ月後でした。

ひどい頭痛がすると言って病院を訪れてそのまま入院し、その夜に大きな出血があったらしく意識不明となり、半月近く眠り続けた結果、意識を取り戻すことなく息を引き取りました。

突然のことに母は半狂乱状態でした。不幸中の幸いで、会社の方は古参の役員が献身的に夫を支えてくれて、父の不在が大きな混乱を招くことはありませんでした。葬儀も会社主導で無事に執り行うことができました。

そして、最後に残ったのが相続問題でした。野口さんの説明では、父の主な相続財産は自社株と自宅不動産、さらに金融資産が2億円強。相続人は母と私の2人で、遺言書がないので法定相続分をベースに遺産分割協議を行う形になるということでした。

相続手続きで判明した衝撃の事実

野口君の話が気になっていたので、野口さんにさりげなく「手続き上、特に問題はないんですね?」と確認すると、「今、確認中です」という答えが返ってきました。

それから2週間ほど後、とんでもないことが判明しました。やはり父には婚外子がいたのです。私よりひと回り下の男性で、父と一時期愛人関係にあった仕事関係の女性が父の許可を得て出産し、父は彼のことを認知していました。

「今は認知された婚外子なら実子と同じ扱いになりますから、法定相続分通りとすれば坂倉家の場合は奥様が半分、珠希さんと彼が4分の1ずつを相続することになり、彼には最低でも8分の1を請求する権利があります。お父さんが珠希さんの旦那さんと養子縁組していたら、もう少し彼の取り分を減らすことができたのだけれど……」

自社株や自宅不動産の評価額次第では、婚外子に金融資産の多くを渡さなければならなくなるかもしれない。野口さんからそんな話を聞かされ、目の前が真っ暗になりました。父の死後体調を崩していた母は、とうとう寝込んでしまいました。

そんな大事なことを家族に隠していた父を恨みました。しかし、本当の試練が待っていたのはそれからでした。

●最終的な相続税評価額は4億円ほどで、坂倉さんは苦渋の決断を下すことに――後編【父急逝で“婚外子”の存在が発覚「父の罪が許せない」遺産1億円を奪われた親子の悲痛な想い】で詳説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。