今を大切にする生き方へ
思春期から続いていた母親との心の距離は、少しずつ変化していきました。
「最近になってやっと少しずつ、母と人間同士として会話できるようになった気がします」と、みずのさんは話します。
これまで厳格な保育士としての顔しか見せなかった母親が、弱さや不安を見せるようになったことで、むしろ人間的な親近感が生まれたのかもしれません。
母親の病気は、みずのさんに大きな気づきをもたらしました。
「人生の後半を楽しむことを目標にするのは、決して悪いことではありません。けれど、そこにたどり着けないかもしれないという現実を、私は母の姿から教えられました」
その気づきは、みずのさんの日々の生活にも変化をもたらしています。
「だから今、私は思うんです。旅行に行きたいなら、今行こう。やってみたい趣味があるなら、今始めよう。『そのうち』『余裕ができたら』は、思っているよりもずっと遠い未来なんです」
もちろん、すべての願望を即座に実現できるわけではありません。しかし、いつかのために今を犠牲にするのではなく、バランスを取りながら日々を充実させる方法を模索することも大切です。
「明日が当たり前にやってくるとは限らないのなら、“いつか”の楽しみを、“今日”に引き寄せて生きていきたいんです」
みずのさんの言葉は、私たち一人ひとりに問いかけています。