開業予定日はまさかのうどんの日

「そもそもなんで7月2日なのよ⁉ あなたにも縁もゆかりもない日じゃない! しかも知ってる⁉ その日ってうどんの日なのよ⁉ 何でうどんの日に蕎麦屋を開くの⁉ どういう意味⁉」

弘美は一気にまくし立てる。弘美に反論されたことで健司は目くじらを立てて怒鳴り返してきた。

「黙れ! お前にそんなことを言われる筋合いはない! 俺ができると言ったらできるんだよ! これはもう決定なんだ」

「あなたが勝手に決めたことでしょ。それに、しかも何よ、脱サラして蕎麦屋って! なんだかありきたりなことして……みっともない!」

健司は思いきり拳をテーブルに叩きつけた。鈍い音に弘美は体を強ばらせる。

「黙れと言ってるだろ……! 蕎麦屋をやることはもう決まってるんだ。お前はパートを辞めて従業員として働け。それがお前のやるべきことだ」

そう言うと健司はリビングを出て行ってしまった。

残された弘美はどうにかしてポジティブに頭を切り替えようとしたが、今回はそれもできそうになかった。

●弘美などまるでいないかのように勝手に蕎麦屋開業に向けて突き進む健司。いったいどうすればよいのか……。苦悩する弘美の元に娘の佐夜子から電話がかかってきた。心配させまいと最初はなんとか事態を隠していた弘美だが、ついに耐えることができず、苦境を打ち明けてしまう。そんな弘美に佐夜子が告げたのは思いもよらない提案だった。後編:【「あんたのままごとには付き合ってられない…」相談なしに早期退職し身勝手すぎる挑戦を始めた夫に怒れる妻が突き付けたもの】にて詳細をお届けする。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。