NISAをプッシュして、資産形成の機運を高めても…そもそも向かない人もいる現実も。あなたは含み損に耐えられている?

とはいえ、政府目標はあくまでも政府目標であって、個人には全く関係のない話です。政府が2027年までに3400万口座を目標に掲げているからといって、個人が盲従する必要はどこにもありません。

正直、投資には向き、不向きがあります。たとえば今回のトランプ関税ショック(と勝手に名付けましたが)によって株価が急落したことで、2024年1月のNISA制度見直しから投資をスタートさせた人の中には、含み損を抱えた方もいらっしゃるかも知れません。それで夜も寝られないというような人は、恐らく投資には不向きです。その場合、投資をしないという選択肢を選ぶのも、考え方のひとつでしょう。

ただし、その場合、現預金だけではインフレに負ける恐れがあることだけは、頭に入れておく必要があります。今後、年2%ずつインフレが進むとしたら、それに合わせて預金の積立ペースを調整しなければなりません。

ちなみに、年1%の利率が預金から得られるとして、30年間で3000万円を積み立てるには、毎月約7万円の積立が必要であり、それは無理だと思う人もいるでしょう。

ただ、よく考えてもらいたいのは、皆さんが30年後までに築ける資産は、預金だけではないということです。

たとえば会社員や公務員であれば、65歳以降に受け取れる公的年金によって、月々の生活に必要なキャッシュフローはある程度確保できますし、勤務先に制度があるならば、定年時に退職金という、ある程度まとまった資金を受け取ることもできます。もっといえば、親から引き継ぐ遺産もあるかも知れません。それらを加味すれば、自助努力でつくる老後の生活に必要な資金は、3000万円も必要ないかも知れません。

トータルで将来、確保できる資金がいくらなのかを、ざっくりで良いので把握しておき、残りの資金を預貯金の積立でカバーできるなら、無理して投資をする必要はないのです。