NISAの買付額、政府目標を2年前倒しで達成…新NISAは成功といえる!?

少し前のニュースになりますが、日本証券業協会が3月19日に、1~2月のNISA口座を通じた大手証券会社10社の買付額が3.8兆円になったことを発表しました。

NISA制度(旧NISA)がスタートしたのは2014年1月からのこと。それから10年が経過した2024年12月末の買付額は、全金融機関で52.7兆円だったので、これに大手証券会社10社の1~2月の買付額を加えると、政府が2022年11月に、2027年までの目標として掲げていた買付額56兆円を超えたことになります。金額的にはわずかですが、2027年までという政府目標に対して約2年、前倒しでの目標達成ということになります。

新NISAへの制度見直しは圧倒的な使い勝手の良さをもたらして、資金流入の原動力に

政府目標を前倒しで達成できた最大の理由は、やはり2024年1月から新NISAへの切り替えが行われ、年間の非課税投資額と全体の非課税枠が大きく拡大したからでしょう。それまでのNISAは、一般NISAの年間非課税枠120万円で、全体の非課税枠は600万円まで。一方、つみたてNISAの年間非課税枠は40万円、全体の非課税枠は800万円で、一般NISAとつみたてNISAの併用は認められていませんでしたから、最大の非課税枠は600万円か800万円のいずれかを、自分で選択する必要がありました。

それが2024年1月からの制度見直しによって、一般NISAの流れをくむ「成長投資枠」は、年間非課税枠が240万円、つみたてNISAの流れをくむ「つみたて投資枠」の年間非課税枠が120万円で、成長投資枠のみの利用だと全体の非課税枠は1200万円まで。つみたて投資枠と合わせれば、成長投資枠1200万円とつみたて投資枠600万円を合わせて1800万円の非課税枠になりました。しかも旧NISAの時とは違い、現行NISAは成長投資枠とつみたて投資枠の併用が認められています。

このように非課税枠が大幅に見直されたことに加え、旧NISAはあくまでも時限的な制度でしたが、新しいNISAでは非課税期間の無期限化、制度の恒久化も図られました。こうした使い勝手の良さが、資金流入を促したと思われます。

NISAがスタートした2014年1月時点の口座数は、まだ一般NISAのみで492万4663口座でした。

加えてつみたてNISAとジュニアNISAがそろった2018年12月末時点では合計の口座数が1284万9737口座、合計買付額が15兆8437億5493万円になり、NISAの制度見直しが行われる直前の2023年12月時点では、合計口座数が2248万6363口座、合計買付額が36兆5111億286万円になりました。ちなみに合計買付額は単月のものではなく、NISAの制度がスタートしてからの累計額になります。

合計口座数、合計買付額の両方とも、ここまで着実に増えてきた感はありますし、実際に年間ベースで口座数が減少することもなく、順調に伸びてきています。年間の増減率を見ると、以下のようになります。

<合計口座数>

2015年・・・・・・19.66%
2016年・・・・・・9.43%
2017年・・・・・・4.09%
2018年・・・・・・14.22%
2019年・・・・・・8.88%
2020年・・・・・・12.12%
2021年・・・・・・17.13%
2022年・・・・・・3.50%
2023年・・・・・・18.24%

<合計買付額>

2015年・・・・・・116.48%
2016年・・・・・・46.46%
2017年・・・・・・33.49%
2018年・・・・・・25.75%
2019年・・・・・・15.81%
2020年・・・・・・17.89%
2021年・・・・・・20.25%
2022年・・・・・・18.48%
2023年・・・・・・18.47%

ここまでが旧NISAの数字です。ちなみに、2015年までは一般NISAのみの数字、2016年から2017年は一般NISA+ジュニアNISAの数字、2018年以降は一般NISA+ジュニアNISA+つみたてNISAの数字になります。

では、NISAの制度見直しが行われた後の数字はどうなったでしょうか。

これが、やはりというか、当然の結果なのかも知れませんが、大幅に増加しています。2024年12月時点での、成長投資枠+つみたて投資枠のNISA口座数は2560万4058口座で、前年比13.86%増、買付額は52兆7023億8844万円となり、前年比44.35%となりました。特に買付額の増加率は、NISAがスタートしたばかりの2016年の数字に肉薄しています。

これらの数字を見る限りにおいて、NISAの制度見直しは所与の目的を前倒しで達成できたという点で、一応の成功を収めたと考えて良さそうです。