マンション空き住戸が大量発生する理由は?

こうした住戸ではあと10年もすれば、残った親も高齢者施設等に入居する、あるいは相続が発生することによって空き住戸化するのです。実はマンションには大量の空き住戸予備軍が内在しているのです。

なぜマンションは世帯主が亡くなったあとに空き住戸化しやすいのでしょうか。相続などで引き継いだマンションが空き住戸化することに相続人があまり関心を持たないことが原因です。

戸建て住宅であれば、庭の管理、通風、通木などでちょくちょく顔を出さなければ、近所からクレームが来る。見た目からも管理していないことがわかってしまうなど、防犯面も心配。近隣への体裁も含め、相続人は一定の気配りをします。ところがマンションであれば、鍵をかけておけば、内部を誰かに覗かれることがない、通風や通水をしていなくても、室内が急速に劣化もしないのでは、と考え、放置しがちとなります。溜まりがちになる郵便物も、エントランスにある郵便受けにテープでも貼れば、手間をかけずにすんでしまいます。

つまり気楽に放置できると思われがちなのがマンションなのです。自分が掃除をしなくても共用部の清掃は管理人がやってくれる。防犯もエントランスにあるオートロックでしっかりと施されているので問題なし。放置状態でも特に誰から文句を言われることもない。こんなお気楽な発想からマンション空き住戸が大量発生しているのです。

●第2回は【孤独死、相続人の不在…築年数が古く「空き住戸化」が進むマンションの悲惨な末路】です。(4月23日に配信予定)

新・空き家問題――2030年に向けての大変化

 

著者名 牧野 知弘

発行元  祥伝社

価格 1,012円(税込)