4月の法改正で定年制度が変わる

ここまで勤続年数による退職金についての傾向を見てきたが、そもそもの定年制についての現状と今後についても押さえておこう。

同調査では、定年制の有無と定年年齢についても聞いている。定年制を採用している企業は99.4%(集計157社の156社)、うち定年が「60歳」の企業は76.3%(同119社)、「65歳」の企業は21.2%(同33社)となっている。

定年後の継続雇用制度を採用しているのは95.5%(定年制のある156社のうち149社)。勤務延長制度を採用しているのは2.0%(149社のうち3社)となっている。

再雇用時の雇用・就業形態は、「嘱託社員」が最も多い企業が54.1%(集計148社のうち80社)、「契約社員」が29.1%(同43社)、「正社員」4.7%(同7社)、「パート・アルバイト」「子会社・関連会社の従業員」がともに4.1%(同6社)等となっている。

なお、これまでは企業ごとの労使協定により、定年後の継続雇用制度の対象者を限定することが認められていた。これが2025年4月から法律の改正により、60歳以上の雇用者が希望すれば全員が継続雇用制度の対象となる。また、企業の努力義務として70歳までの就業機会を確保することも加わる。

人手不足の深刻化に伴い、雇用の流動化はこれまで以上に加速することが見込まれる。個人にはより一層の自律した多様な働き方、飽くなき成長への追求が望まれ、一方の企業側は多種多様な人材採用や育成の推進、世代間の技術および知識の伝承や共有、従業員の健康サポート、働く環境の充実・整備などの施策が不可欠となるといえそうだ。

なお、同調査による退職金事情はあくまで対象企業の制度による結果であり、参考値に過ぎない。特に勤続年数が長いケースにおいては、制度設計当初からこれまでの経済事情等を鑑みると、現在あるいは今後も永続するとは限らないだろう。むしろ過度にあてにせず、今からでも取り組めるNISAやiDeCoなどの資産形成制度を活用するといった、個人の自立的な行動がカギを握るといえるかも知れない。

調査概要 調査名:令和5年賃金事情等総合調査 調査主体:厚生労働省中央労働委員会 調査実施期間:2023年8月2日~9月12日 調査対象企業:380 社(資本金5億円以上かつ労働者1000人以上)、うち回答企業数 201社(回収率52.9%)