トランプ氏が就任演説で語らなかった政策の動向は
大統領就任式でトランプ氏によって語られなかった政策。ここが今後の注目点になるでしょう。
出所:内田氏
まず、財政について。トランプ政権は「トランプ減税の恒久化」「法人税の引き下げ」などを打ち出しているわけですが、就任式では財政について何も語られませんでした。
ただ、その後のダボス会議で「アメリカに来てどんどんものを作ってほしい。アメリカでものを作る限りは法人税を安くする」といった文脈の中でトランプ氏は法人税減税について少し言及しています。
トランプ減税の動向によって、経済・長期金利に動きが出てきます。来週以降その動静に注目です。
そして、ダボス会議では金融政策についても「アメリカに限らず世界中でどんどん金利を下げてくれ」という発言がでました。
FRBに対しても直接的、間接的に「どんどん利下げを続けろ」という圧力をかけていくでしょう。
発言はありませんでしたが、日本として気になるのが為替です。ドル高は気に入らないのか。円安や人民元安を容認するのか。
米国から見て、貿易収支の不均衡という問題で標的になりやすい国はどこか。それは貿易赤字が大きい国や地域です。貿易赤字が最も大きいのが中国、次いでEU、旧NAFTAは3番目のメキシコと8番目のカナダを足し合わせるとEUと同等の規模になります。
対する日本は今から25年前の2000年では、日本は中国とほぼ並んで一番大きい部類の貿易赤字国でした。米国にとっては「憎い相手」という言い方をしてもおかしくなかった。
ですが、今は貿易赤字国としては上位から6番目、また中国の4分の1の規模しかありません。ですから、日本はあまりトランプ氏の対象にはならないのではないか。そういう見方もできます。
これは、現在の貿易赤字の規模を横軸、縦軸にバイデン政権の間、ドルに対してどれくらい自国通貨が下がったのかをプロットしたものをまとめたグラフです。
右下に行けば行くほど貿易赤字は大きく、ドルに対して通貨は値下がりしていて、米国にとっては「非常に憎たらしい相手」ということになります。
つまり、右下に行けば行くほど米国のターゲットになりやすい。まず中国を見てみると、貿易赤字は大きいものの、人民元安はバイデン政権下で10%ほど進んだ程度です。ユーロも13%ほどでした。
そのなかで目立つのが円安です。日本はバイデン政権下、主要な貿易赤字相手国の中で最も通貨安が進みました。
米国財務省は4月と10月に「為替報告書」というレポートを議会に提出します。そこで日本が「為替操作国」に認定される可能性もゼロではない。
今後、トランプ氏のXや公演、演説で「ドル高はけしからん。日本は為替を操作しているのではないか」という発言が飛び出してくる可能性は十分に頭に入れておいた方が良いと思います。
とはいえ、瞬間的に円高に振れるでしょうが、政治的な圧力や発言でマーケットの流れがずっと決まるわけではありません。トランプ氏の批判の矛先になったからといって、円高トレンドになることはないでしょう。
いずれにせよ、為替について、日本は少し神経質になる時間帯が続くのではないかと考えています。
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後編では日銀利上げ後の動静ついても解説していきます。
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