マーケットの警戒感とは逆の動きへ

トランプ氏の大統領就任演説で市場が警戒していたことは、関税の引き上げ、ないしは発動でした。

出所:内田氏

そうなれば関税が上がり、インフレは再燃。FRBは利下げを停止する。下手をすれば利上げしないといけなくなるのではないか。それを受けて、米国では特に長期金利がインフレへの期待感の上昇に伴い上昇し、株価の重しになり、為替ではドル高になる。

このように警戒していたわけですが、実際には逆の動きになりました。関税は上げるでしょう。ですが、すぐに発動はしなかった。つまり、今週は為替市場ではドル安、株式相場は株高に、金利については低下の動きになりました。

 

実際に過去1カ月の米国長期金利の動きを見ておきます。先週の段階で「トランプ新政権は一気に関税を上げるわけではなさそうだ」という見方から、4.8%台まで上昇していた長期金利は、4.6%台まで低下していました。

その後、大統領就任演説で「具体的かつ急激な関税引き上げ」という話はしなかったことから、長期金利は4.5%台まで低下しました。

しかし、その後は材料が出尽くした。また、そもそも米国の景気に対しては依然として強気な見方も多いなかで、長期金利は4.6%まで戻っている。こんな状況です。

そして今週、米国の長期金利が下がってきました。ここで、長期金利を構成する三つの要素(期待成長率、期待インフレ率、プレミアム)の動静を考えてみたいと思います。

出所:内田氏

まず、財政出動がある場合は米国政府の借金が増えますから、悪い金利上昇(プレミアム)が起こりがちです。

けれども、大統領就任会見では、トランプ氏から財政について具体的な発言が出たわけではありません。したがって、今週長期金利が上がった要因は、期待インフレ率の低下と悪い金利上昇の緩和だと考えられます。

このように金利が上昇したり下落したりした場合は、その背景を抑えておく必要があると思います。