ここで過去のデータを見てみましょう。アメリカのダウが10日連続で下げるほど金融政策に混乱が見られた60年代、70年代。そのときの実質政策金利の動きが次の通りです。シャドーがかかっている箇所は景気後退期です。
まず60年代、実質政策金利は2%ほどで推移しています。しかし、60年代後半から70年代初頭の景気後退期で大きくマイナスになります。ここで米国はインフレの亢進に慌てて政策金利を一気にあげました。その後、実質政策金利は6%、一時は8%まで上がっています。当時は「首を絞める」ほど強烈なことをしなければ、インフレを退治できなかったのです。
ですが、今回の政策金利は最大値でもせいぜい2.5%ほどです。60年代、70年代のような極端な形にはなっていません。成長率の大幅な屈折や失業率の急騰はないだろうと思われます。その結果、ナスダックは下がりましたが、世の中にはさほど大きな影響は出ていません。
●今後の動きはどうなるのか。後編【「リーマンショック」時の予兆と酷似? 米国REITが発する“小さな危機”のシグナルとは】で紹介します。
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岡崎良介氏 金融ストラテジスト
1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。