償還の憂き目にあわないよう…長く付き合える投資信託とは

では、長期投資を前提とした場合、繰上償還されにくい商品はどう選べばよいのか。そのヒントは投資信託の規模を表す純資産残高にある。

純資産残高は、投資している金融商品の価格の変動で増えたり減ったりする。株式市場の調整などで純資産残高が一時的に減少するのはよくあることだが、市場が回復しても残高が減少を続けているときは注意してほしい。投資家の投資信託の解約が相次いでいる可能性が高いためだ。

運用会社は、解約が発生すると、投資家に返金するための現金を手元に用意すべく、株式や債券を売却することになる。解約が増えれば、売却する資産も増えていく。仮に有望な銘柄を見つけたとしても、新しく資金を投入するといった前向きな投資ができなくなり、次第に満足な運用が行えなくなっていく。残高が減少を続け、ついに運用に支障が出るようになると、運用成績を回復させるのは難しくなり、信託報酬などのコストの負担も重く押し掛かる。この段階に入ってしまうと、さらに解約が増えるという悪循環に陥り、繰上償還が現実味を帯びてくる。

以上をまとめると、残高が恒常的に減少している、あるいは、全く増えていないファンドは避けた方が無難と言える。理想は、投資家の支持を集め、残高が増え続けているファンドだ。残高の目安は、運用開始から間もないファンドを除き、最低でも50億円程度は欲しいところだ。

なお、NISAの対象商品は、投資信託の運用を担う運用会社が自ら届出を行ったものを、社団法人投資信託協会が取りまとめて公表している。金融庁は、監督官庁として対象商品の「基準」を作成しているにすぎず、また、投資信託協会も、個別の投資信託の良しあしを判断しているわけではない。したがって、各投資信託が安定した成績を収め、長期にわたって投資家の支持を集められるかどうかは、あくまでも運用会社の運用手腕にかかっている。