気がつけば、新NISA制度が始まってはや半年が経過した。
筆者も、約1年前に概要が固まってからは、新NISAをテーマにさまざまな場所で講演を行ってきたが、ここに来て参加者から寄せられる質問の傾向に変化が出てきているように感じる。
とりわけ最近目立つのが、「旧NISAで保有する商品を売却して利益を確定すべきかどうか」という内容である。ネット証券を中心にNISAの口座数と積立件数が飛躍的に増加し始めた2020~2021年ごろに投資を始めた人の多くは十分な含み益が出ているとみられ、「さて、どうすべきか」と迷うのも無理ははい。
結論から申し上げると、20%程度か、それ以上の含み益が出ているなら、解約(売却)して利益を確定させても良い。というのも、旧制度で購入、あるいは、積み立ててきた商品を非課税で保有できる期間にはタイムリミットがあるためだ。
旧NISAの非課税期間には「タイムリミット」がある
旧NISAの一般NISAは投資をした各年から数えて5年、つみたてNISAは20 年間、非課税で運用を継続できる。つまり、制度の最終年にあたる2023年の購入分は、一般NISAで最長2027年まで、つみたてNISAで同2042年まで非課税で商品を保有し続けることができる。
いずれも、非課税で継続保有できる期間に猶予はある。しかし、いずれは終了するため、一定程度のリターン(含み益)が発生している場合は、非課税期間の満了を待たずして売却し、新NISAの投資原資に充てるなどしてもよいだろう。先述した通り、売却の目安となるリターンの水準は、おおむね20%程度と考えるとよい。
「まだ猶予がある」と安心して、うっかり旧制度の非課税保有期間を過ぎてしまうと、保有商品は課税口座へ払い出されることになる。その場合の取得単価は、非課税期間最終日の基準価額、もしくは、終値となる。含み益が出ていることに気付かずに課税口座に払い出されてしまうと、売却時に課税されてしまうため、非課税保有期間が2027年で終了する一般NISAを利用していた人は、特に注意が必要だ。
旧制度は、一度非課税枠を使ってしまったら、売却しても非課税枠が元に戻ることはなかったので、特につみたてNISAについては、「1日も早く積み立てを始めて、後はひたすらほったらかしておくべし」というメッセージが主流であった。積立投資を実践する上での心得としては正解だが、現実にはタイムリミットがあるということを心得ておいてほしい。