1998年の銀行窓販解禁、2011年前後のネット証券台頭…シェアの変遷

こうした株式市場の環境変化に加え、個人が投資をする窓口である証券会社をはじめとする金融機関も、大きく変わりました。

まず、個人が投資を行う際の間口が大きく広がりました。

たとえば投資信託。かつては証券会社でしか販売していませんでしたが、1998年12月からは銀行の窓口でも販売されるようになりました。

投資信託協会の「販売態別純資産残高の状況」によると、公募投資信託の純資産残高において、2007年10月には証券会社が46兆5320億円であるのに対し、銀行は35兆1499億円まで肉薄し、そのシェアは42.79%にもなりました。

何しろ銀行には個人の預金口座があり、そこに毎月の給料が振り込まれます。その預金から投資信託への乗り換えが進み、銀行窓口での投資信託販売は堅調に伸びていきました。それに対して証券会社は決定的な打ち手がないまま、投資信託のシェアを銀行に奪われていったのです。

今も、銀行は投資信託を取り扱っていますが、現時点では再び証券会社に販売の主流が移ってきました。2011年前後から徐々に証券会社のシェアが上向き始め、2012年1月には証券会社の60.25%に対して銀行は39.15%、2016年12月には証券会社の70.05%に対して銀行は29.26%、2024年3月には証券会社の80.00%に対して銀行は19.35%というように、証券会社のシェアが伸びていったのです。

この背景には、やはりインターネット証券会社の台頭が大きかったと考えられます。

1999年に株式売買手数料が自由化されたのと同時に、インターネット証券会社が次々に立ち上がってきました。

それまで株式売買手数料は固定化されており、どの証券会社も一律でした。そのため、売買金額100万円以下に適用される手数料率は1%という高い料率でしたが、それが自由化されたことによって、支店を持たず、ローコストオペレーションが可能なインターネット証券会社を中心に、手数料引き下げ競争が始まりました。

これによって、個人の株式取引の多くを取り込んだインターネット証券会社は、次の主戦場を投資信託に移します。系列にかかわらず、投資信託のマーケットプレイスという立ち位置で、さまざまな投資信託会社のファンドを扱い、かつローコストオペレーションの徹底化によって、個人が投資信託を購入する時、当然のように払っていた「購入時手数料」を無料化するなど顧客利便性を高め、投資信託の購入窓口として利用者を増やしていきました。