もしトラが現実化したら…日本企業は阿鼻叫喚!?

問題は、「もしトラ」が現実化した時です。

たとえば税制ひとつを取っても、トランプ候補を擁する共和党は、小さな政府を“是”とする政党なので、規制緩和と共に減税を実施するでしょう。実際、ニュージャージー州ワイルドウッドで5月に開かれた集会の場で、トランプ候補は「バイデン増税の代わりに中所得層、高所得層、低所得層、ビジネスを対象とするトランプ大減税を提供する」と語っています。6月13日には、自身が大統領に就任した時は、法人税率を20%に引き下げることを、米財界首脳らとの非公開会合で発言したというニュースも流れました。

財政赤字で日本が米国のことをとやかく言えた義理ではありませんが、米国も巨額の財政赤字を抱えています。そのなかで大減税が可能なのかどうか定かでありませんが、財政赤字が深刻化するとの見方が広まれば、米国の長期金利には上昇圧力が加わる反面、米ドルへの信認低下から、米ドル売りが進むことも考えられます。

米ドル売りという点では、トランプ候補の保護主義的なスタンスに合致してきます。トランプ候補は通商政策において、日本を含む外国から輸入される製品を対象に、原則として10%の関税をかける方針を打ち出しています。理由は、米国の貿易赤字を削減するためです。

当然、10%の関税をかけることになれば、日本から米国への輸出に影響が及ぶでしょう。それに加えて懸念されるのが、為替の動きです。7月には1ドル=161円台まで進んだ米ドル高・円安ですが、7月25日の時点で1ドル=151円95銭まで米ドル安・円高が進みました。これまでの米ドル高が、米国の産業界にとってネガティブだと判断されれば、ここから先、米ドル高・円安が大きく進む余地は、かなり限定されると考えられます。

ちなみに帝国データバンクが行った「企業の想定為替レートに関する動向調査(2024年度)」によると、平均の想定為替レートは1ドル=140円88銭でした。現時点において、米ドル/円は1ドル=154円台なので(7月30日時点)、まだ10円以上の円高が進まない限り、日本企業の業績悪化要因にはなりませんが、7月中のわずか1カ月間で10円幅の円高が進んだことを考えれば、1ドル=140円を割り込むケースは、十分に想定されます。仮にそこまで米ドル安・円高が進めば、日本の輸出企業を中心にして業績悪化懸念が強まり、株安に転じることも十分に考えられます。

ただ、より個別の動きについて言うならば、株式市場全体の値下がり圧力が強まったとしても、防衛関連企業にとって、トランプ大統領の誕生はポジティブな材料かもしれません。中国との緊張関係が今以上に強まる可能性があるからです。

加えてトランプ候補は、同盟諸国に対し、さらなる防衛関連の資金負担を求めてくる可能性もあります。中国との緊張関係に加え、防衛関連費が増加するとなれば、防衛関連企業の株価は堅調に推移するでしょう。

ここからの注目点は、ハリス候補がどのような経済政策を打ち出してくるのか、それが元バイデン政権のそれと、どのくらいの違いがあるのか、加えてトランプ候補がどの程度、保護主義的な経済政策を考えているのか、といったことでしょう。