各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、SBI証券のデータをもとに解説。
SBI証券の投信売れ筋(販売金額)ランキングの2025年7月最終週(28日~8月1日)のトップ3は前月と同様に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」で変わらなかった。第4位には前月の第5位から「iFreeNEXT FANG+インデックス」、第5位に前月第6位の「SBI 日本株4.3ブル」が上がり、前月第4位だった「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」は第6位に後退した。また、前月第9位の「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」が第7位に上がり、トップ10圏外から「ニッセイNASDAQ100インデックスファンド<購入・換金手数料なし>」、「Tracers NASDAQ100ゴールドプラス」、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」がランクインした。
パフォーマンスの確かさが信頼につながる「世界のベスト」
7月は月次で株価指数「S&P500」は2.17%高と3カ月続伸し、「NASDSQ総合」は3.70%高と4カ月続伸した。主要国の株式インデックスでは国内株の「日経平均株価」と「TOPIX」が4カ月続伸している。3月末から7月末までの累計上昇率は「NASDAQ総合」が22.10%と、「TOPIX」の10.69%、「日経平均株価」の15.31%を大幅に上回っている。7月に米国株ファンドの中でも「NASDAQ」に関係するファンドに注目が高まったのは、そのパフォーマンスを背景にしていると考えられる。そして、トップ10圏外から「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」がランクインしたのも、国内株が値上がりした動きを映したものだろう。
一方、7月にランクを上げた「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)は、2025年は一貫して分配金込みの基準価額が「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)を上回る運用成績を残していることが改めて評価されたと考えられる。米国株のみを投資対象とする「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に対して、広く世界の株式を投資対象とする「世界のベスト」は、ベンチマークこそ先進国株式インデックスである「MSCI ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)」としているが、圧倒的な人気ファンドである「オルカン」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を引き合いにすると、「世界のベスト」の比較対象は「オルカン」になる。また、毎月1万口当たり150円の分配金を継続して出していることも評価のポイントの1つだろう。ただ、150円の分配金を毎月払い出すことによって基準価額の水準が4月には7000円台に落ち込んだ。その後の株高で7月には9000円の水準に戻ったとはいえ、150円の分配金水準を維持すべきかどうかを検討すべきところにきているのかもしれない。
また、運用成績としては、株式ファンドを大きく上回る「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」が売れ筋ランキングの順位を落としているのは、6月半ば以降に基準価額の推移が横ばいになってしまっているからかもしれない。金(ゴールド)ファンドは、株式ファンドのリスクヘッジ手段として持たれるケースが多く、株式市場が大きく下落した際には金ファンドの利益確定によって株式ファンドの下落分を埋め合わせようという売りが出やすく、反対に、株価が順調に値上がりする際にはリスクヘッジの需要が減退してしまうという側面もある。7月の「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」のランクダウンには、株式ファンドと比較して圧倒的に残高が小さい金ファンドの立ち位置が表れているようにみえる。