(2)「企業年金をまず年金受取で考える」のはナゼ?

確定給付企業年金(DB)は会社を辞めた時、確定拠出年金(企業型DCもiDeCoも)は60歳の定年退職時に一時金で受け取る人が多くいます。それは、「一時金で受け取った場合、税制上退職所得となって有利だから」「年金で受け取ると税金や社会保険料が高くなって結局損するから」といった理由がほとんどです。

しかし、本当にそうでしょうか? ここで年金受取を選択するメリットを確認しておきましょう。

運用しながら年金受取ができる

まず、確定給付企業年金を一時金で受け取った場合を考えます。大体の方が生活資金の分を計画的に管理しながら、一部資金を運用していくことを検討するのではないでしょうか。

ただこの時思い出したいのは「確定給付企業年金はその運用を代わりにやってくれる制度」だということ。言い換えれば、確定給付企業年金で年金受取を選ぶと、自分で苦労して資産運用せずとも、運用を代行してもらいつつ年金受給できるのです。

また、企業型確定拠出年金は自分で運用する必要はありますが、運用しながら年金を受け取るうえで運用収益が非課税であることは大きなメリットになります。

「終身年金」での受け取りを選べば安心感は桁違い

確定給付企業年金は給付利率(運用利率)が決まっていて、終身年金で受け取れる制度があります。また、企業型確定拠出年金の中にも終身年金として受け取れる商品があります。終身年金での受け取りを選べば、亡くなるまで年金給付が続く安心感があります。

そして確定給付企業年金・企業型確定拠出年金ともに、年金給付の確定期間終了前であれば一時金で受け取れて、亡くなった場合も遺族が残額を一時金でもらうことができます。

一時金vs年金…実は条件によっては受取総額がほぼ同じに

もちろん、税制上の損得は、年金給付の制度の違い、個人の収入によって変わることは事実です。ただし、一定条件のもと企業年金の年金受取(運用利回り2%、給付期間20年)と一時金受取とを比較した場合、受取総額はほぼ同じという試算※もあります。

※参考:三井住友信託 確定拠出年金業務部「ペンションジャーナル 人生100年時代における「老後生活資金準備」の在り方を考える」2021年3月

繰下げによる年金額増や、75歳まで運用継続の選択肢も

確定給付企業年金には受取開始を繰下げると年金額が増えるものがあり、企業型確定拠出年金は働いていれば65歳まで掛金を出せて、75歳まで運用継続できます。

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これらのメリットをふまえると、企業年金はまず年金で受け取ることを考えたいものです。その上で税金や社会保険料の損得、自分で資産運用する自信があるかなどを材料に、年金か一時金のどちらが自分にとってベストな受け取り方かを考えましょう。