<前編のあらすじ>

吉岡さんは長年父親の崇さんと2人で暮らしてきた。だが、昔から病気がちであった崇さんは入退院を繰り返しており、大小さまざまな病気を抱えていた。

そのため家は貧しく、崇さんの兄、吉岡さんから見ると叔父にあたる遼さんから支援を受けることも多かった。生活費や病院の治療費といった金銭的な支援はもちろん、幼少期は崇さんに代わって面倒を見てもらうことも多かったという。まさに吉岡さんからすれば第2の父親とも言えるような存在だ。

しかし、吉岡さんと叔父の遼さんとの関係は、父である崇さんの死をきっかけに問題が発生する。「俺にも相続財産を得る権利があるはずだ。財産を少しは分けてもらいたい」。遼さんからの突然の要求に吉岡さんは困惑してしまった。

●前編:【「俺は長年お前たちにお金を出してきた」父親を亡くして間もない男性を困惑させた叔父の「無慈悲な発言」】

吉岡さんは相続財産を渡す必要はない

吉岡さんから上記のような相談があったのはちょうど昨年だ。私と吉岡さんは学生時代の友人だ。私が法的部分に多少なりとも詳しいということを彼は知っており、私に相談してきたわけだ。

吉岡さんは重い扉を開くように小一時間かけてゆっくりと言葉を紡ぐ。一通り話をしたところで「叔父さんに相続財産を渡すべきなのか?」と私へ問う。

確かに一連の流れを読み解いていくと吉岡さんの悩みには一定の理解ができる。私は自身の経験を踏まえ遺留分と寄与分についてそれぞれ説明をしたうえで、「法律上相続財産を渡す必要はない」と結論付けて回答した。