NISAでは完全な「無分配」投信は選べない

では、分配金を全く払わない「無分配」の投資信託というのは存在するのか。

完全な「無分配」型の投資信託というのは、事実上、単位型投資信託(運用期間があらかじめ決められていて、設定前の募集期間しか購入ができない投資信託)の一部でしか認められていない。したがって、信託期間が無期限でかつ無分配の投資信託というのは基本的に存在しない。

例えば、積立で人気の「eMAXIS Slim」シリーズ(三菱UFJアセットマネジメント)の目論見書を確認すると、「収益分配」の項目には以下のような記載がある。

年1回の決算時に分配金額を決定します。(分配金額の決定にあたっては、信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針とします。)
販売会社との契約によっては、収益分配金の再投資が可能です。

分配方針について「無分配」を明言せず、あくまでも「分配を抑制する」という表現にとどめているのは、当シリーズが信託期間を無期限としているためである。

つみたて投資枠の対象商品は総じて分配を行うものが少ないが、「日経平均高配当利回り株ファンド」(三菱UFJアセットマネジメント)や、「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」(農林中金全共連アセットマネジメント)のように、年1~2回の決算時に着実に分配を行うファンドもある。なお、両ファンドの信託期間はいずれも無期限である。

繰り返しになるが、分配方針は運用方針の一環であり、分配の有無で投資信託そのものの優劣を語ることはできない。過去の分配実績から見て、今後も分配が支払われる可能性が高いファンドを保有している場合は、受け取り方法を見直したり、余裕を持った積立設定を行ったりするなどの工夫をした方が良いだろう。