デイリー総裁が管轄するサンフランシスコ連銀の地域である西海岸の失業率は、他の州に比べて悪化しています。カリフォルニア州の失業率は5.3%まで上昇し、その後5.1%に若干低下しましたが、上昇トレンドは続いています。ワシントン州も同様に上昇しています。
一方、テキサス州は4%で横ばい、フロリダ州は上昇傾向にあります。西海岸やニューヨークなど、先進的なビジネスが集中する地域では、インフレだけでなく失業率にも注目する傾向が強まっています。
失業率の上昇幅を過去の景気交代期と比較すると、現在の0.6%の上昇は決して小さくありません。過去の景気交代期では、0.3%から0.8%の上昇で景気の転換点となっていました。今回の0.6%の上昇は、自然失業率には達していないものの、かなりの失業者が出ていることを示唆しています。
このような状況から、そろそろ金融緩和に向かう可能性が考えられます。これは世界経済にとっても、特に日本にとっても重要です。円安によって日本はインフレの影響を受けており、アメリカの金融緩和が待たれています。
地区連銀総裁の意見がFRB本部にどの程度影響するかについては、数値化は難しいものの、一定の影響力があります。地区連銀は「ベージュブック」という形で地域の経済状況を報告し、それがFOMCの議論の基礎となります。また、アメリカには大規模なマクロ経済モデルがあり、これらのデータと地域の声を合わせて政策が決定されます。
次のベージュブックの担当地区によっては、金融政策の方向性に影響を与える可能性があります。サンフランシスコやニューヨークが担当すれば比較的ハト派的な内容になる可能性がありますが、中部の地区が担当すれば、タカ派的な内容になる可能性もあります。
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岡崎良介氏 金融ストラテジスト
1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。